【屏風山】樹木の宝庫と歴史の路の周回コース

　 芦ノ湖の東側にある屏風山は箱根外輪山のひとつである。山頂近くが切り立っていて屏風のように見えるところから、その名がついたそうだ。ハイキングコースは“関所破りの路”だったようだ。箱根の関所の裏山で、伊豆の農家の娘お玉などがこの山を越えようとして捕まり、処刑されている。

　 ここ２年ほど真冬の箱根ハイクに魅せられている。一昨年の明神ヶ岳、昨年の鷹巣山・浅間山とも大雪翌日のハイキングとなり、そのあまりの素晴らしさに、すっかり箱根の雪山の虜になった。

　 ９時半頃、恩賜箱根公園の駐車場に着く。駐車料金１時間310円とは高すぎる。国道１号を５分ほど戻り、ガソリンスタンド脇の路地角に“屏風山40分”の道標が立っている。その狭い道を塞ぐように乗用車が停まっていたので、あの大きな道標がなければ通り過ぎてしまうだろう。

　 国道から脇道に入り民家の前を過ぎるとすぐに山路となる。車の往来が激しい国道からほんの１,２分、ハコネダケが生い茂る雑木林の路となる。少し行くと路の両側にイノシシの仕業とも思えない深く掘り起こされた穴がいくつもある。国道から10分ほどで林道終点に出る。

　林道終点から本格的登りとなり、しばらく行くと歩幅の合わない丸太土留の階段となる。クサリまで備えられるほどの急斜面だ。まだ身体が温まっていないせいか意外と辛い。しかしそれも10分足らず、“屏風山20分”の道標が立つ分岐を左に曲がると路は平坦になる。

　 JR清水駅集合 7:50 既に待機していたＧさんの車に乗り込みすぐに出発。国道１号線を行く。三島を過ぎ箱根の山に差し掛かっても記録的な暖冬のせいか雪のかけらも見当たらない。

　樹木のトンネル、背丈の倍もあるハコネダケの切通しの中を進む。すっかり葉を落とした冬枯れの広葉樹林帯、気持ちの良い路だ。再び、丸太土留の緩やかな階段路、道端にミヤマシキミの小群落、異常なほどの暖冬のせいか蕾がほんの少し開きかかっている。階段路はすぐに終わり数分で山頂に着いた。

　山頂は、秀吉の小田原攻めの際、守る北条氏の見張り砦があったそうだが、今は深い樹木に覆われ展望はない。山頂案内板に砦の跡が残っていると書かれているが分からなかった。ハコネダケの茂みの中に苔むした三等三角点を見つけた。宝探しのつもりで探してみることを薦めます。

　山頂を後に深山の趣さえある広葉樹林の間を縫うように下る。木々の根元にミズナラ、ヤマボウシ、イボタノキなどの名前が表示してある。10分ほど下るとテーブルとベンチの置かれた広場に出る。少し早いがここで恒例のお汁粉を作る。

　広場を後にしても広葉樹林が続いている。ヒメシャラ、ミズキ、カエデなどまさに植物の宝庫といわれるにふさわしい。薄っすらと霧も出て、ますます雰囲気の良い路となる。下りきって、沢沿いの路を少し行くと車道に出る。

　 車道を右に曲がるとすぐに甘酒茶屋の暖簾が目に入る。江戸時代から続く歴史ある茶店だそうだ。お汁粉を食べたばかりでもあり、名物の甘酒は諦めた。隣の茅葺屋根の資料館を覗き、裏手の箱根旧東海道に入る。

旧東海道 於玉坂

　 旧東海道は“箱根八里”といわれる石畳の道だ。延宝８年(1680)、徳川幕府が布設したものだが、文久元年(1863)、和宮内親王が降嫁する際に全面的に改修されたそうだ。関所破りの“お玉”が処刑された於玉坂や天ヶ石坂などけっこうな登りが続き、下りにかかるとまもなく元箱根に到着する。

　樹齢400年ほどのみごとな杉並木を通り、出発点の駐車場に戻る。近くの旅館“夕霧荘”で汗を流し３時前に帰路につき、清水駅に４時頃着いた。