【至仏山】一面雪の尾瀬ヶ原と燧ヶ岳を俯瞰する

シリーズ  日本百名山     前  
山 名  至仏山(しぶつさん)
山行日  2006年5月4日(木)
同行者  G.Mさん、U.Mさん
歩行時間  4時間53分(除く山頂、山荘休憩)
コース 鳩待峠→至仏山→山ノ鼻(至仏山荘)→鳩待峠
関連情報                          アクセスカウンター
1/2.5万地形図 至仏山 [北東]    至仏山 [北西]
木道 ▼踏みつけで裸地化した山ノ鼻への路は、1989年閉鎖された。群馬県や東京電力が4億円の資金を投じ、木道や登山路を整備し1997年に復活したそうだ。5/12-6/30:入山禁止
行 程
場 所 着時刻 発時刻
 鳩待峠 7:50 8:10
 至仏山 10:42 11:42
 至仏山荘 12:53 13:25
 鳩待峠 14:35 16:55

  尾瀬ヶ原を挟んで対峙する燧ヶ岳と至仏山は、尾瀬のシンボル的な存在の山。燧ヶ岳は2度登り、2度とも好天に恵まれた一方、9年前に鳩待峠から山頂を往復した至仏山は、濃い霧に阻まれ何の展望も得られず、尾瀬ヶ原の向こうに聳える燧ヶ岳の雄姿を俯瞰したいとの願いは叶わなかった。再訪を心に誓いながらアッという間に9年の歳月が流れた。

  今回のOAA山行は、この時期にしか登れない日本300名山の景鶴山に登るために計画された。往復11時間を要すハードな山行だ。静岡市役所前を前夜8時40分に出て、深夜1時20分戸倉に着き仮眠。夜明けを待って鳩待峠に向かうも、ゲートが閉まっていてその前に数十台の車が列をつくっている。例年にない大雪で雪崩の危険があるため、朝7時半から午後5時半までしか通行できないようだ。安全確認の除雪車が戻ってきて警告通り7時半にゲートが開いた。

  鳩待峠着7時50分、身支度を整え出発は8時過ぎ。予定より2時間30分以上遅れての出発だ。おまけに午後5時までに戻らねば5時半のゲート閉鎖に間に合わない。往復9時間を切る必要がある。時間に追われてまで景鶴山に登りたいとは思わない。迷わず、別行動で至仏山に登ることをリーダーに申し出る。かねてからお願いしていたこともあり、快く了解される。幸いなことにこれを聞いて、メンバー2名が私に同行してくれるという。

  景鶴山のメンバー5名を見送って、雪に半分埋もれた大きな案内板の脇から至仏山に向かう。踏み跡はたくさんある。ボードやスキーを背負った人が多く、ハイカーは極めて少ないようだ。右手に至仏山を見ながら、ゆるやかな上りの雪面をのんびり歩く。景鶴組に比べればどんなにゆっくり歩いてもお釣りがくる。

  天気がよく目標も良く見えるので、どこをどお歩いてもよいのだが、樹木につけられた赤布を目印に登る。30分ほど登ると左に日光白根山方面の山が見えはじめる。やがて右後方には燧ヶ岳も姿を現す。高度が上がるに従い尾瀬ヶ原が見下ろせるようになり、燧ヶ岳・会津駒ケ岳・景鶴山がしだいに大きく見えてくる。空は青く、傾斜はあくまでゆったり、刻々変化する雪山の展望を楽しみながらの快適なスノウハイクが続く。

  夏路は1867m峰を左に巻き小至仏山の山頂を通っているが、先行者の踏み跡は1867m峰も小至仏山も右に巻いて直接、至仏山に向かっている。深いヤブは雪の下、残雪期ならではの特権で歩き易いところから至仏山を目指す。

  森林限界を越え小至仏山の長いトラバースをこなすと山頂は近い。左前方に露出した岩が見え、ひと登りすると見覚えのある大きな山頂標石が目に入る。山頂は岩場で周辺の雪はすっかり消え、多くのボーダーやスキーヤーが休んでいる。

  風もなく温かな日差しの中で、360度の大展望をほしいままにする。山頂方位盤に記された山々がすべて見通せるのではないかと思われる大パノラマに、ただただ時間のたつのを忘れる。ふと、景鶴山に向かった仲間を思いだす。ここより200m以上も低い景鶴山はいかにも小粒に見えるが、彼らはまだ山頂目指して苦闘を続けていることだろう。

  尾瀬ヶ原を見下ろしながら年配のご夫婦と話しをする。何気なく「山ノ鼻ルートは通行禁止なんですよネ」とつぶやくと、「至仏山は5/12-6/30まで、どのルートも入山禁止です」という。逆に言えば、今は山ノ鼻へ下っても良いのだそうだ。「それにしては、誰も山ノ鼻へ下りませんネ」と聞くと、「山ノ鼻から鳩待峠まで、200m近い登りだから……」と言う。時間はたっぷり、われわれは、ためらうことなく山ノ鼻に下ることにする。

  先ずは眼下に見える木道を目指す。その辺りだけ雪が融け地肌がむき出しになっている。スキーを担いだ人とすれ違い10分余りで木道(階段)まで下る。木道周辺に雪はなく、尾瀬ヶ原に向かって一気に階段路が下っている。10分ほど階段を下ると再び急傾斜の雪面。転ばないようブレーキをかけながらの下りは意外に辛い。下っても下っても尾瀬ヶ原は近づかない。

  この急斜面でスキーを担いだ人が両手、両膝を雪面に付けて休んでいる。スキーが邪魔で座れないのだろうが、相当にバテているようにも見える。私には、とてもこちらから登る気にはなれない。

  鳩待峠に向かう踏み跡は何本もある。ボーダー、スキーヤーだけでなく、景鶴山や燧ヶ岳からのハイカーも多いのだろう。単に雪景色を楽しむ親子連れも少なくないようだ。中には運動靴姿の家族もいる。それぞれ思い思いに鳩待峠を目指す。時に踏み跡が途絶え、雪の急斜面をへっぴり腰で恐々下りながらも楽しそな人たちである。

  鳩待峠で景鶴山に向かった仲間を待つ。八王子から来た方も景鶴山のメンバーを待っている。われわれ同様、至仏山組の方々で「景鶴山メンバーは、朝4時半に山ノ鼻を出発してまもなく12時間、けっこう健脚そろいのメンバーがまだ帰り着かない。鳩待峠を8時過ぎに出たのではとても無理だ」と言う。しばらくして八王子の方々と一緒にH.K.さんが戻ってきた。8時間半程度で鳩待峠から景鶴山を往復したことになる。他の仲間も次々と到着。最後は、夜通し運転しそのまま景鶴山に向かったI.N.リーダー、帰路の東電小屋辺りで脚を攣ったそうだが、それでもせいぜい15分遅れの到着だ。OAAの中でも超健脚揃いのメンバーとはいえただただ感心する。

 17:30閉鎖のゲートを15分ほど余裕で通過し、本日の宿泊地 荷頃温泉に向かう。

  1時間近く下り樹林帯に出ると、そこから尾瀬ヶ原までは近い。高度差800mを1時間余りで下ったことになる。正面に燧ヶ岳を見ながら、広々した尾瀬ヶ原を山ノ鼻目指してまっすぐに進む。雪融け後はとてもこんな歩き方はできないだろう。

例年になく雪の多い鳩待峠の道

至仏山登山口

登りはじめて小1時間、燧ヶ岳が大きく見える

右前方に至仏山を見ながら登る

小至仏を右に巻くトレース

けっこうな急斜面の小至仏山トラバース路

至仏山山頂

至仏山山頂から見る苦い想い出の巻機山

尾瀬ヶ原に向かって一気に下る木道(階段)

尾瀬ヶ原へ一直線の急斜面

正面に燧ヶ岳を見ながら尾瀬ヶ原を行く

鳩待峠への路

思い思いに踏み跡辿り、鳩待峠へ

  至仏山荘の食堂でラーメンを食べる。鳩待峠に午後3時までには戻るとリーダーに伝えておいたので時間はたっぷり、どこまでものんびりできる山行だ。