【トムラウシ山】天上の楽園

シリーズ 日本百名山  幌尻岳 十勝岳
山 名 トムラウシ(2141m)
山行日 2001年8月18日
天 候 晴れ
同行者 いつもの山仲間
歩行時間 10時間53分(休憩含む)
コース 登山口⇔カムイ天上⇔前トム平⇔トムラウシ



トムラウシ山々頂
  トムラウシ山は、大雪山と十勝連峰との間にあって、独立峰の趣を持つ巨大な山塊であり、トロイデ型の独立火山である。

  トムラウシ温泉から日帰り可能と言っても標高差は1000m、ひどいぬかるみ道で体力の消耗を強いられ、往復10時間を超える難コースである。

トムラウシ山登山口
 昨日、幌尻岳下山後、登山口の林道ゲートにたどり着いたのは16:30、急いで東大雪荘に向かうも着いたのは夜8時過ぎ。「風呂に入る前に食事を済ませて下さい」と宿の人に言われる。


 明日のトムラウシは往復10時間以上の長丁場故、出発は4時半とのこと、ゆっくりと温泉を楽しむゆとりはない。


 4時半ころ宿を発ち、登山口の駐車場広場を朝5時頃出発する。青空が広がっているが、滴れ落ちる朝露が葉に当たりまるで雨が降っているようだ。笹原の中を広く切り開いた道を20分ほど歩くと東大雪荘からの道と合流する。それほど急な登りではない尾根道をカムイ天井まで順調に歩をすすめる。
 カムイ天井からは、谷を隔てて二つの峰を連ねたトムラウシが見える。心が弾むのとは裏腹に、カムイ天井からの下りはひどい悪路だ。道はぬかるみ岩は滑る。せっかく稼いだ高度もおつりがくるくらいに下ってしまう。帰りにはここを登り返すのかと思うとうんざりだ。7時頃ようやくコマドリ沢分岐にでた、歩き始めて2時間も経つのに標高は登山口と大差ない。


 F.S.さんはコマドリ沢分岐から戻ると言う。昨夜から「トムラウシはパス」と言うのをみなで励まし、何とかここまで引っ張って来たのだが、今の下りでたっぷりと神経を使わされ、これ以上同行を強いるのは憚られた。

カムイ天上よりトムラウシ山を望む

コマドリ沢分岐
 休憩後、F.S.さんと別れ沢を登る。幸い沢に水は無く、あの神経をすり減らされた沢までの下りよりもずっと歩き易い。


 沢の合流点で一休み、登ってきた沢と別れ右手の沢を詰める。トウウチソウ・カライトソウなど一面のお花畑が続く。ゆっくりと写真を撮りたいのだが、今日の長丁場を思うとそんな余裕はない。ひたすらペースを守って登るだけだ。
 前トム平の稜線に出る付近の岩場で、目の前に「チーチー」と鳴くナキウサギが現れる。「わー!」とか「かわいい!」の歓声に「静かに」とのリーダーの一声、驚いて逃げてしまうからだ。昨日の幌尻岳山頂でのシマリスといい、野生の動物を目前で見られたのはラッキーだ。これだけの仲間がいればクマさえ間近で見られればと思ってしまう。
ナキウサギ

雪を残したトムラウシ山
 トムラウシの頂きがちょこっと見えると、前トム平は直ぐだ。はい松がまばらに生え、みごとなコマクサが咲いている。この辺りにはオトギリソウが目に付く。休憩時に写真を撮ろうとしたら電池切れ。予備の電池に換えたが、充電したはずのニッケル水素電池もどうしたわけか電池切れ。ガッカリである。懐中電灯の電池は規格違い、他の人に聞けばあるかもしれないが、万一の際の懐中電灯。聞くのは控えることにした。

 ケルンがいくつも立てられた小ピークを越し、次のピークに立つと展望が大きく開ける。雪を残したトムラウシが目の前に大きくそびえ周囲には小さな沼が点在、岩の回りはお花畑。自然の作り上げた庭園、まさに天上の楽園だ。この付近一帯を「トムラウシ公園」と呼ぶそうだ。
 私の電池切れを見ていたM.Y.さんが「無線機の電池が使えるかもしれない」と思い出してくれて、無線機からリチウム電池を貸してくれた。容量はたっぷりなので万一のときは戻せば無線機は十分使用できる。ありがたく貸していただいた。


 すばらしい景色と緩やかな起伏にすっかりルンルン気分になったが、山頂まではもうひと登りしなくてはならない。最後の登りはガレ場だ。岩の積みあがった狭い山頂に多くの先客が休んでいた。ぐるりと周囲の展望はほしいまま。これで北海道の日本百名山9座すべての頂を踏むことができた。

トムラウシ公園

トムラウシ山々頂直下の急登

一等三角点のトムラウシ山々頂
 
トムラウシ山々頂より下山直後
 来た道を戻らねばならないのでゆっくりはしていられない。下り始めて1時間ほどするとトムラウシ山頂はガスで隠れてしまった。最後尾で花の写真を撮りながら皆の後を追う。沢が本流に合流する所で休んでいた先客が「ここの水は飲めるよ」と言う。ちょろちょろと流れ出る岩清水だ。行く時もここで休んだのだがまったく気づかなかった。ペットボトルに貯めるに時間がかかる。順番に汲んでは口にする。「うめー!」。残りの水が少なくなっていただけにありがたい。
 涸れ沢を岩伝いに調子よく下るのだが、面白いと思うのは初めだけ、30分もするといいかげん嫌になる。ようやくカムイ天井への分岐に着きホッとする。最後の登りを頑張ると、あとは笹原のなかのゆったりした下りだ。F.S.さんが途中まで出迎えてくれた。車まであと一息だ。


 帰路、東大雪荘に立ち寄りN.K.さんが置き忘れた財布を受け取っただけで風呂にも入らず、十勝温泉に向かう。この山仲間としては珍しく「下山直後の風呂を諦めても、ゆっくり歩こう」の声が大きく、予想外に遅くなってしまった。十勝温泉に着いたのは午後8時を過ぎていた。

カムイ天上
行 程(着時刻)
場 所 往路 復路
駐車場  発 4:57 15:50
カムイ天上 6:07 14:44
沢出合 7:00 14:01
沢分岐 8:03 13:14
前トム平 9:01
トムラウシ 10:54 発11:13

イワブクロ

コマクサ
アクセスカウンター