森に包まれ,歩いてはじめて記憶におさまる山

【山 名】宮之浦岳,翁岳,黒味岳
【山行日】2000年11月3日(金)
【天 気】晴れ
【メンバー 】としこさん(主役)他,いつもの山仲間

【行 程】登山口6:40→7:15淀川小屋7:20→8:25花之江河8:35→10:25宮之浦岳10:40→11:20翁岳山頂11:30→黒味岳分岐13:00→13:25黒味岳13:30→14:00花之江河14:10→高盤岳展望所14:25→14:55淀川小屋15:10→15:40登山口


黒味岳山頂より宮之浦岳と永田岳

 朝食後,出発.緩やかな上り下り,左右にくねりながら木の根が露出した道がつづく樹林帯を行き淀川小屋につく.一息入れて再び登りはじめると,杉の巨木がつぎつぎと現れる.苔むした老木,からまった大蛇のような樹根,うっそうとした樹林帯のなかを縫うように,登山道は細々と続く.数切れの輪切り大根を並べたような岩を頂に乗せた高盤岳を左に見てしばらくすると,ガイドブックなどに日本庭園のようだと書かれた花之江河につく.苔むした杉の巨木の道を通ってきただけに,尾瀬をコンパクトにまとめたような高層湿原は庭園と言うより神苑を連想させる.

小花之江河

 としこさんにとって日本百名山完登の日.屋久島グリーンホテルを2台のレンタカーで夜も明けやらぬ5時半出発.安房林道の終点,標高1350mの淀川登山口まで1時間ほどでついた.

 木道をつたって湿原を抜け,黒味岳分岐を過ぎ投石平に出るとようやく宮之浦岳が姿を現す.投石の名のとおりゴロゴロした大きな白い岩が露出している.ヤクザサやシャクナゲや白く立ち枯れた木々の奥にたおやかな峰が広がっている.密生したヤクザサを分けて安房岳,翁岳の斜面を横断しコブを2つ越えいよいよ宮之浦岳の登りとなるところに若いヤクシカがササを食べていた.人慣れしているのかわれわれに気づいても動ずる様子はない.

 巨岩の間を抜け,登り切ると一等三角点の宮之浦岳山頂につく.「としこさん」の百名山完登の瞬間だ.仲間が担ぎ上げたワインで「おめでとう,乾杯!」.「とみさん」が書いた『祝日本百名山百座達成』の横断幕を広げて記念撮影.山仲間4人目の百座達成の同行登山となった.
 山頂は360度の展望.重なり合う山々の中でも,ひときわ目を引くのは永田岳だ.南には,今通り抜けてきた屋久島の峰々が並んでいる.

 下りは往路を戻る.途中,翁岳に登ることにする.大きな岩の頂に指で突っつけば滑り落ちそうな小さな岩を2個乗せた岩峰だ.ヤクザサに覆われた尾根道はところどころ落とし穴があり気が抜けない.頂の巨岩の割れ目を10m余りよじ登ると古びた固定ロープが垂れ下がっている.これを使って巨岩の頂上へ,さらにはその上に重なった小岩に登り翁岳を足下にした.何故か,宮之浦岳に立ったときよりも感動した.下から見上げたとき,とても登れるとは思えなかった頂に立てたからか,或いは,こんなとこまで来る人はほとんどいないと思う優越感からだろう.今下りてきた宮之浦岳がすぐそこに大きく見える.

 再び往路に戻り,南下する.投石岩屋を通過し,今度は黒味岳を往復する.頂上からは真正面に谷を隔て宮之浦岳が見える.端然とした三角錐の山の左に岩頭を並べた永田岳.名残の山々を飽かず眺めた.
 出発してちょうど9時間,登山口に戻った.仲間が付近の木に数匹のヤクザルを見つけた.みな「あっちにもいる」「こっちもだ」と夢中で写真に撮っていた.

 帰路,周囲を囲う木道から樹齢3000年,翁風の紀元杉を見た.柵越しの屋久杉はいただけないが,自分も含め観光客に根本を踏みつけられると樹勢が衰えるからだそうで,やむを得ないのだろう.
 さらにヤクスギランドを一周し,仏陀杉を見るなど屋久島の自然を堪能した一日を締めくくった.

 宮之浦岳は富士山のように外から見て感動する山ではない.中に入り込み,深い森に包まれ,自分の足で歩いてみてはじめて記憶の底におさまる山なのだろう.

翁岳

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 平内海中温泉 寸志(\100)  屋久島南端にある野趣豊かな混浴の秘湯。一日2回の干潮時の前後2時間位しか入浴できない。満潮時には海中に沈む。湯船は3つある。脱衣場はなく、水着での入浴も禁止。女性には入浴がためらわれるロケーション。

主役としこさんの日本百名山完登記

更新:2013/09/03