「芸は汗をかいてやるものではない」 と春風亭柳昇さんはいう。
若い人は高座に上がると、緊張して全力投球しようとする。顔を紅潮させ、汗が光り、声が上ずってくる。それはそれでほほえましいかも知れないが、噺に余裕がなくなる。だから客のほうが疲れてしまう。
「それじゃ、いけないんです。汗をかかないようにやるのが芸なのです。ただし、汗をかいた経験がないものに、かかないようにはやれません。ですから汗をかくのも一つの大事な過程です。そこを素っ飛ばすことはできません」
初めから力を抜いてやろうとするのは、ただの手抜き。汗をかきにかいたあと、ぴたり、と出なくなるのが芸なのだ。
落語家 春風亭柳昇
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