分岐から華厳寺山門までは20分ほど、無理と思えば引き返すつもりで、バスは立花屋の駐車場で待機してもらっている。妙法ヶ岳を越え、横蔵寺に行ける見通しがついたところで携帯電話で連絡し、横蔵寺に向かってもらうことにした。

 分岐でひと休みし歩きだすとすぐに小さな祠に石仏。正面軒下に“第十三番石光山 石山寺”と記されその脇に「のちのよを、ねがうこころは、かろくとも、ほとけのちかい、おもきいしやま」と詠われている。以後、数十メートルごとに同様の祠が奥の院の三十三番まで続いている。天台宗の古刹西国三十三霊場巡りのミニ版とのことだ。

  分岐からは本格的な山歩きとなる。“妙法ヶ岳 2.1km”の道標が立ち、その隣に“谷汲コースは起伏も激しく途中で下山する支線もありません”などの注意書きが書かれている。

【東海自然歩道 No.29】妙法ヶ岳コース

関連情報                    アクセスカウンター
1/2.5万 美濃神海 [南西]  美濃神海 [北西]  谷汲 [北東]
ガイドブック  ふれあいウォーク東海自然歩道
   宇佐美イワオ著 風媒社 1999
推薦HP ▼1999/05/01 東海自然歩道{神海ー横蔵}
行 程
場 所 着時刻 発時刻
 神海橋 8:08 8:15
 県道分岐 8:46 8:50
 淀坂峠 9:42 9:46
 華厳寺分岐 10:00 10:10
 奥の院 10:44 10:51
 妙法ヶ岳 11:40 11:46
 昼食 12:10 12:35
 607mピーク 13:33 13:38
 シャクナゲ平 14:02
 横蔵寺旧蹟 14:14 14:17
 横蔵寺(舎利堂・本堂) 14:50 15:24
 満願の湯 15:30 16:27
シリーズ  東海自然歩道     
山行日  2008年02月24日(日)
同行者  グループ・せせらぎ 14名
歩行時間  6時間35分(休憩含む)
コース 神海橋→淀坂峠→分岐→妙法ヶ岳→607ピーク→横蔵寺

  昨夜は、華厳寺山門前の旅館 立花屋に泊まった。朝、部屋の窓を開けると一面の銀世界、旅館の外に出ると、雪化粧した参道の桜並木の美しさに目を見張る。

華厳寺山門前より冠雪の桜並木参道

華厳寺山門前で立花屋の女将を囲んで

  食事を済ませ、出発準備をする我々に「本当に山越えをするんですか?」と、旅館の女将が心配顔に問いかける。「天気は上々、みなアイゼン・スパッツなど雪の準備はしているし、無理と思えば引き返しますよ」と応える。山門をバックに集合写真を撮りバスに乗る。昨日のゴール神海橋まで10分余りで到着。

踏み跡ひとつない集落内の道

  しばらく旧道の山路をゆるやかに登り高みに出ると、一面真っ白な畑に挟まれた根尾川の流れが見下ろせる。高みを過ぎると下り坂となり、先ほど別れた県道脇に出る。“華厳寺 3.2km、妙法ヶ岳 4.9km”の道標が立っている。

旧道の高みから根尾川を見下ろす

  梶尾川沿いに県道をしばらく北上、県道から集落内の旧道に入ると踏み跡一つない雪道となる。集落を抜けると山路となり、降り積もった雪も深くなる。

  沢沿いの車道を淀坂峠に向かってゆるやかに上って行く。青空も見え、天気は回復基調だが、まるで吹雪の中を歩いていると思えるほど、枝に降り積もった雪が時おり強風にあおられ舞い散っている。

まるで吹雪の中を行くようだ

  登るにつれて雪は深くなるがさしたる苦労もなく、ベンチとテーブルが置かれた淀坂峠に着く。峠から15分ほど下ると
華厳寺、妙法ヶ岳の分岐に着く。

まもなく淀坂峠

分岐を妙法ヶ岳に向かう

ミニ霊場の石仏

  ミニ霊場めぐりの路は沢筋を登っていくが、階段や手摺などしっかり整備されていて雪に覆われていてもなんの不安もない。

沢筋を行くミニ霊場巡りの路

  1,2分ごと、次から次の小祠の石仏は、行程の良い目安だが、つど手を合わせ、頭を垂れる姿が慌しい。

ミニ霊場に手を合わせる

奥の院

 奥の院傍らの小さな祠は三十三番霊場、“谷汲山 華厳寺 「よをてらす、ほとけのしるし ありければ、まだともしびも きえぬなりけり」”と詠われている。

  分岐から30分余り奥の院に着く。雪を被った石灯篭に挟まれた幅広の路には動物のものを含め足跡ひとつない。一面雪の深閑とした中に建つ奥の院にりりしさを覚える。

  奥の院を後にし少し登ると不動尊堂、裏の洞窟には不動明王が祭られている。お堂の前から眼下を見ると、雪木立の間から華厳寺参道や門前町が見下ろせる。

不動尊堂から華厳寺門前町を見下ろす

  お堂からは本格的な山歩きの路、傾斜はきつくなり雪も深くなる。杉木立の中の階段路が雪の下なので歩きやすいのが幸いだ。稜線に出ると風が強くなる。

妙法ヶ岳に向かって

  稜線に出るとほどなく妙法ヶ岳山頂。樹木に囲まれ展望はないが、葉が落ち明るい山頂なので昼食としたいところだが風当たりが強くあきらめる。三角点を囲んで集合写真を撮り、早々に山頂を後にする。

妙法ヶ岳山頂

  少し下ると送電線の鉄塔下に出る。明るく広々してはいるがここも風が強すぎる。さらに進むも、稜線上の路はアップダウンを繰り返すばかりで、風を避けての食事場所が見当たらない。

食事場所を探しながら稜線を行く

  いくら進んでも状況は変わりそうもないので、風の少ない南面の日溜まりで昼食をすませる。
  妙法ヶ岳からまっすぐ東西に連なる稜線の西端は632mピーク、この山頂から稜線は南北に延びている。自然歩道はこのピークを右に巻いているが、吹き溜まりの雪は深い。何人かでトップを交代しラッセルしながら進む。

632mピークを右に巻く

 南北に連なる尾根も起伏の多い路だ。右方の木々の間から妙法ヶ岳が望める。相変わらず登ったり下ったりの繰り返し、風も強い。ベンチとテーブルが設置された607mピークを下るとほどなく林道に出る。

林道に出るもすぐに山路へ

  林道を横切り少し登ると杉林の中に雪をかぶったシャクナゲが目立つ。シャクナゲ平のようだ。

シャクナゲ平付近

  道標に従い下って行くと横蔵寺旧蹟の石柱が立っている。傍らの解説板によると、横蔵寺は1200年ほど前(801年)この地に開山されたが信長の兵火に遭って焼失し、江戸時代の再興時に現在地に移されたそうだ。

横蔵寺旧蹟

  先に進むと本堂跡に続き、講堂跡、仁王門跡がある。その先の休憩舎からは、急斜面を九十九折れに一気に下り横蔵寺舎利堂に出る。舎利堂には、山梨県の御正体山の洞窟で入定し、出生地のこの地に安置された妙心法師の舎利仏(ミイラ)が祀られている。

仁王門跡

  横蔵寺には、舎利仏の他にも多くの国宝・重文を蔵しており“美濃の正倉院”とも呼ばれている名刹である。

  ゆっくりと見学した後、本堂前でゴールの集合写真を撮り、待機のバスに乗る。昨日も入浴した“谷汲温泉 満願の湯”で汗を流し帰路につく。焼津駅に20:37 戻り着いた。

横蔵寺山門

本堂前

renew:2013/08/31