【猫越岳、三蓋山】大規模なブナの自然林を楽しむ遊歩道

シリーズ  静岡百山    前  
山 名  猫越岳、三蓋山
山行日  2007年5月20日(日)
同行者  グループ・せせらぎ 4名
歩行時間  6時間05分(休憩含む)
コース 仁科峠→猫越岳→猫越峠→つげ峠→三蓋山→滑沢峠→旧天城峠→天城峠
関連情報                          アクセスカウンター
1/2.5万地形図 土肥 [南東]   湯ヶ島 [南西]
ガイドブック  ▼新・分県登山ガイド 静岡県の山 加田勝利著
  2005/06 ¥1500 山と渓谷社
交通 ▼狩野自動車 tel:0558-85-2323
▼タクシー 湯ヶ島⇒仁科峠     ¥4,390
        天城トンネル⇒湯ヶ島 ¥3,150
立ち寄り湯 湯ヶ島温泉 河鹿の湯
  tel:0558-85-1568  ¥250  13:00-22:00
地名(かな) ▼猫越岳:ねっこだけ    三蓋山:みかさやま
  滑沢峠:なめさわとうげ 古峠:ふるとうげ
行 程
場 所 着時刻 発時刻
 仁科峠 8:55 9:00
 後藤山 9:22 9:24
 火口湖 9:55 9:58
 猫越岳 10:09 10:12
 つげ峠 11:54
 三蓋山 12:27 12:37
 滑沢峠 13:03
 旧天城峠 13:28 13:35
 古峠 14:03
 天城峠 14:39 14:42
 新天城トンネル入口 15:05

 伊豆山稜線歩道は、伊豆市修善寺“虹の里”から“天城峠”までを結ぶ全長約43kmの自然歩道である。今回歩く仁科峠から天城峠までは約15km、標高800〜1000前後の稜線を行く路で、大規模なブナの自然林やヒメシャラ、アセビなどの原生林を楽しめる路である。昨年2月、今回と同じコースを歩き感動し、新緑の時期にぜひ再訪したいと計画した山行である。

仁科峠

ナベ石からの展望(魂の山、棚場山)

  仁科峠は、8年ほど前、天皇・皇后両陛下による植樹祭を契機に開通したスカイライン沿いにあるが、バスは通っていない。マイカーかタクシーに頼るしかない不便さがすばらしいコースの割りに静けさを保っている所以だろう。運転手さんに集合写真のシャッターをお願いして出発。

  JR興津駅集合7:00、当日朝になって体調不良で1名不参加、4名で出発。R1、R136、R414を走り湯ヶ島のタクシー会社、狩野自動車(有)に8:20頃到着。ここに車を置かせて頂き、身支度を整えてタクシーで仁科峠に向かう。

  笹原を幅2メートルほど刈り払った路をゆるやかに登っていく。ひと登りで大きく展望の開けた、ナベ石とよばれる巨岩のある高台に着く。振り返るとスカイライン沿いに、ゆったりした起伏の山並みの中に魂ノ山、棚場山が望める。行く手には後藤山の右に猫越岳が見える。

ナベ石から後藤山(正面)と猫越岳(右奥)

  登りと同様、笹を切り開いた幅広の路をしばらく下ると牧場への舗装道路を横切り後藤山への登りとなる。スズタケを切り開いた路からアセビのトンネル路となる。歩幅の合わない丸太の階段をひと登りすると後藤山。

後藤山山頂

  山頂標識がなければとても山頂とは思えないほどの平坦地にある後藤山を越えると次第に原生林風の路となる。ブナの古木の脇を通りちょっときつい丸太の階段路を登ると展望台に出る。

後藤山を過ぎるとブナの巨木も

展望台への階段路

  展望所を後にするとすぐに火口湖に着く。250万年前に猫越岳が噴火した跡だそうだ。案内板には“猫越峠火口湖”と書かれている。猫越峠は猫越岳を越え向こうなのになぜなのだろう。

 火口湖からほんのひと登りで猫越岳山頂。二等三角点のある小広い山頂だが樹木に囲まれ展望はない。

猫越岳山頂

猫越岳山頂間近のブナの大木

  山頂から少し下ると待望のブナの原生林が続く。よく整備された路の両側にブナの巨木が点在する。Nさんが、ときどきブナの大木に耳を当てている。「水を吸い上げる音を聞きたい」のだそうだ。聴診器を持ってこなかったことを悔やんでいた。

猫越岳を越えるとブナ林が続く

苔むし横たわるブナの大木

猫越峠付近

  右上斜面に花をいっぱい咲かせたツツジが見える。登山路を離れ上って見ると下からは見えなかったみごとなブナの巨木が数本、5人ほどのカメラマンが大きな三脚を構えてブナの写真を撮っている。知るひとぞ知るブナの撮影ポイントのようだ。

自然歩道から見上げた満開のツツジ

知る人ぞ知るブナの撮影ポイントか?

自然歩道沿いにヒメシャラの大木

  ブナ林はこの後も続く。淡い赤褐色の光沢ある木肌のヒメシャラの大木や満開のピンクの石楠花が、新緑に染まる森に彩を添えている。

  右下斜面にはピンク色の小さな花のツツジも咲いている。珍しい花なのかSさんは、迷うことなく急斜面を下って確認にしに行く。多少躊躇したが私も写真を撮りに後に続く。コメツツジらしいとのこと。

自然歩道の頭上に咲く石楠花

  登山路に戻って少し行くと数組のベンチやテーブルが置かれた広々したつげ峠に出る。仁科峠まで6.2km、新天城トンネルまで9kmの道標が立っている。峠を通過すると自然歩道は尾根の左下を水平に行く。Nさんが「尾根を歩きたい」というと、Sさんがすぐに同調し先導する。自然歩道から外れるが尾根通しに行けばまったく問題はないだろう。

尾根に出ると広々としている

  尾根に出ると大きな広場になっている。山火事でもありその後は、食害でもあって、草も幼木も見当たらないのだろうか? だだっ広い尾根を少し行くとブナの林に入り込む。自然歩道でさえあまり訪れるハイカーが少ないコース、ましてや路を外れたこの辺りを歩いた人はほとんどいないだろう。

自然歩道を外れ尾根伝いに三蓋山に向かう

三蓋山山頂

  三蓋山山頂で正規の自然歩道と合流する。ブナの林に囲まれた山頂のベンチで昼食とする。しばらくすると、男性2人が登ってきた。仁科峠からだがもう少し先まで行ってから往路を戻るそうだ。言葉を交わしてみると、われわれ同様、今年の冬に来てあまりのすばらしさに新緑のこの時期に再訪したとのこと。

  山頂を後にしてもすばらしいブナ林がしばらく続く。やがて落ち葉の降り積もった雑木林の路となり、滑沢峠を通過する。同じような路を行き、風情のある旧天城峠(二本杉峠)に出た。幕末に下田開港をめぐって、吉田松陰やハリスなど数多くの歴史的人物が往来した峠だそうだ。この辺りに来ると数組のハイカーに出会うようになる。

天城峠に向かう

旧天城峠

  旧天城峠を後にして先に進む。左眼下にR414が見えるとほどなく古峠、天城越の最も古い峠路であり、戦国時代まで利用されていたそうだが、今はその痕跡すらない。相変わらず路は平坦、よく整備されていて歩き易い。前方が開け、登り尾と思われる山並みが見えると天城峠は近い。

  いかにも峠のたたずまいを感じさせる天城峠到着。携帯電話で迎えのタクシーをお願いしてから下り、旧天城トンネルの入口に下り立つ。このトンネルは全国ではじめて重要文化財に指定された古いトンネルである。さらに、新トンネルの入口まで下ると、既に迎えのタクシーが待っていた。湯ヶ島まで戻り、車を停めたタクシー会社のすぐ近くの河鹿の湯で汗を流し帰路につく。

天城峠