創建された8世紀初頭より、山岳宗教のメッカであった秋葉山は、近世に入ると火防の霊験を中心とした信仰が急速に広まり、全国各地から盛んに参詣登山が行をわれるようになった。山上に上宮が祀られ、今では車で訪れる人も多いが昔ながらに歩いて御参るする人も少なくない。参道は東海自然歩道となっており格好のハイキングコースでもある。

  火防の神として全国に知られる標高866mの秋葉山は、山全体が火の神の御神体。赤石山系の南端に位置し、天竜奥三河国定公園に指定されている。山頂にある神社本殿からは、三河の山々をはじめ、天竜川や浜名湖、はるか太平洋を望む事ができる。

【東海自然歩道 No.16】秋葉山・天竜美林コース

シリーズ  静岡百山     前  
シリーズ  東海自然歩道      
山 名  秋葉山(あきはさん)
山行日  2007年3月18日(日)
同行者  グループ・せせらぎ 10名
歩行時間  7時間10分(休憩含む)
コース 下島バス停→九里橋→三尺坊→秋葉神社上社→秋葉ダム吊橋→市ノ瀬→石打→ヒラシロ遺跡→一本杉→道の駅(くんま水車の里)
関連情報                          アクセスカウンター
1/2.5万地形図 ▼秋葉山 [北東]   秋葉山 [北西]
ガイドブック  東海自然歩道 日帰りハイキング〈1〉高尾山‐奥三河
  武村岳男著 山と渓谷社 1994
交通 ▼バス料金:西鹿島駅⇒下島  ¥630
        くんま水車の里⇒西鹿島駅 ¥630
推薦HP ▼1997/10/11 東海自然歩道{大時−市の瀬}
▼1997/10/12東海自然歩道{市の瀬−三河大野}
行 程
場 所 着時刻 発時刻
 下島バス停 8:56 9:00
 九里橋 9:05 9:08
 三尺坊 10:22 10:27
 秋葉神社本殿 10:48 10:56
 秋葉ダム吊り橋 12:25 12:46
 市ノ瀬 13:30
 石打休憩舎・南 14:22 14:29
 ヒラシロ遺跡 15:24
 一本杉バス停 15:50
 くんま水車の里 16:10 16:15

  登山口の九里橋から下山口の秋葉ダムまでは、かつて秋葉街道と呼ばれた秋葉神社上社への参道である。昨年、同じコースを歩いているので今回の山行記は“2006/01/29 山行記”を手直しすることにする。

  静岡駅 6:23発の電車に今日のメンバー10名がそれぞれの駅から乗り込む。掛川駅で天浜線に乗り換え、西鹿島駅からは、バスで秋葉神社下社に向かう。下島バス停着8:55、バス停には大きな駐車場とトイレがある。下島バス停から登山口の九里橋までは5分ほど、集合写真を撮って出発。

登山口の九里橋

 敷石できっちりと整備された道で宿場町の面影を残す集落を抜けると古からのよく踏み込まれた参道となる。杉林のなか、ゆるやかに蛇行しながら少しずつ高度を上げていく。

 表参道の起点 九里橋とは浜松宿から九里、掛川宿からも九里ということのようだ。海抜100mの表示があり、山頂までの標高差は776m。

敷石の表参道

  東海自然歩道は、秋葉神社上社の参道でもあり道端に丁目石や海抜表示がこまめに目に付く。海抜500m辺りで木間越に、先週辿った犬居城址の行者山が気田川沿いに見下ろせる。さらに5分ほど行くと子安地蔵尊が祀られている。

犬居城址の行者山を見下ろす

  子安地蔵尊のすぐ先で送電線の下をくぐる。送電線に沿って樹木が広々と伐採され左手の展望が開け、見下ろす浜松市街にひときわアクトタワーが目立っている。しばらくすると富士見茶屋跡や土佐の殿様のために巻き路を造ったという土佐坂など伝説の秘められた路を登るとほどなく三尺坊に着く。

送電線通路からアクトタワーが望める

  秋葉山の八合目に位置している三尺坊は、秋葉寺(しょうようじ)の堂宇である。毎年12月、境内で行われる火祭りでよく知られている。三尺坊を後にすると参道の杉や檜がいちだんと大きく、高くそびえるようになる。

三尺坊を後にすると大木が目立つ

 ほどなく隋身門(神門)が見える。昭和18年の山火事において、秋葉神社で唯一類焼を免れた建物である。江戸時代に建てられた風格ある隋身門は、堂々とした入母屋造りで、秋葉山の隆盛を今に伝えている。

隋身門(神門)

秋葉神社上社本殿

  隋身門をくぐると、参詣者が目に付く上社の境内に出る。石段を上ると本殿、大きく展望が開け浜松市街と遠州灘が一望できる。お参りを済ませ本殿を後にする。

本殿を後にする

  両側に常夜燈の立つ立派な石段を下る。右斜面には寄進された樹木が多数植栽され、信者の多さが窺い知れる。しばらく下ると大きな駐車場に出る。

  東海自然歩道の道標に従い車道を下ると直ぐに登山路が分岐する。車道を縫うように何度も横断しながら下る登山路は、裏参道でもあり、町(丁)目石を兼ねた常夜燈がよく目に付く。裏参道からの参詣者はほとんどないのだろう、半ば土に埋もれた常夜燈もあり、参道らしい表に比べ裏は参道というより明らかな登山路だ。尾鷲の檜林、吉野の杉林と並ぶ日本三大美林のひとつである手入れの行き届いた造林帯の中を下る。

秋葉神社裏参道

  自然歩道の道標や常夜燈、さらには地元老人会の短歌が書かれた木札など数多くの目印があるので迷いようがないはずなのだが前回、未舗装の林道に出たところでそのまま林道を下ってしまった。ちょっと注意すれば林道を横切ってそのまま下る路が目に入ったはずなのに……。

  林道を横切り戸倉谷の渓流に沿って10分ほど下り、先の林道を再び横切る。ひと下りして山間の小さな集落を抜けしばらく車道をゆるやかに下る。天竜川沿いの車道に合流しそのまま車道を横切り、秋葉ダムのすぐ下流に架かる吊橋に向かう。吊橋手前の小広場で昼食休憩とする。

山間の集落前を行く

秋葉ダム吊り橋

  昼食後、真っ赤な吊橋で天竜川を渡り、旧龍山村西川を抜けて白倉川左岸沿いに車道を市ノ瀬に向かう。1kmほど歩いて右岸に渡り、緩やかな登り勾配の車道を20分ほど行くとりっぱなトイレがある市ノ瀬に着く。

白倉沢に沿って市ノ瀬に向かう

  市ノ瀬から山路、道標に“石打 2.9Km (75分)”と記されている。茶畑から造林帯の路となり15分ほどで林道に出る。よく手入れされた美しい造林帯の道をしばらく行くと、南側が開け明るい道となり、ほどなくして北の石打休憩舎を通過する。典型的な山上集落を行くと左下方の斜面が伐採されたばかりのようで、檜の香りが漂ってくる。

美しい造林帯の道を行く

  石打集落外れの石打休憩舎(南)でひと休みして、柴集落に向かう。天竜美林の中心地に入り、日の光が遮られ、それまでが明るい雰囲気だったからか寂しささえ感じる。手入れが行き届いた美しい木肌の造林帯の道がしばらく続く。

天竜美林の中心地を行く

 柴の集落に近づくと再び陽射しを浴び明るくなる。柴集落には、15年ほど前に発掘された縄文時代の住居跡のヒラシロ遺跡があり、休憩舎もある。ここから本日のゴール“熊道の駅”のバス停まで、道標に4.1Km、85分と記されている。時刻はすでに15:25ではあるが、これまでの道標時間と実歩行時間から類推するとギリギリ16:12発のバスに間に合いそうである。

柴集落

  遺跡を過ぎても上り勾配の道が続く。時間を気にしながら坂道を上るのは辛いが、1kmほどしてようやく下りとなる。標高は600mほどのようだ。しばらく下ると左下方に車道が見えてきてほどなくしてこの道と合流する地点に休憩舎を兼ねた一本杉バス停がある。

休憩舎を兼ねた一本杉バス停を後にして

ゴールのくんま水車の里は近い

 道の駅売店のおばさんが 「バスに待ってもらうから五平餅はどうかね」と大声で呼び込みしている。メンバー10人に9本の五平餅で売り切れ、とりあえずこれを買い占めてバスに乗る。どうやって10人で分けようかと悩みながら……。

 再び天竜美林帯をどんどん下る。何ヶ所か分岐はあるがしっかりした道標があり迷うことはない。バスに待っててもらうべく、健脚メンバー数人が先行する。最後のメンバーもなんとかバスに間に合った。

更新:2013/03/14