行く手に雪のナイフリッジ

新潟平野を背に雪の尾根路を登る

粟薬師を過ぎてもイワウチワの群落は続く

粟薬師(5合目)

粟薬師手前の水場

【粟ヶ岳】花と展望と雪のナイフリッジ

シリーズ  日本三百名山   前  
山 名  粟ヶ岳(あわがたけ)
山行日  2006年5月5日(金)
同行者  OAA 8名
歩行時間  5時間13分(山頂休憩除く)
コース 五百川登山口⇔粟薬師⇔牛の背⇔粟ヶ岳
関連情報                      アクセスカウンター
地形図 粟ヶ岳
推薦HP ▼2004/05/05 山開報告 粟ヶ岳山行報告
地名(かな) 下田村:しただむら
五百川:いもかわ
行 程
場 所 着時刻 発時刻
 五百川登山口 8:56 9:04
 粟薬師(5合目) 10:23 10:33
 天狗の水場(6合目) 10:49
 牛の背 11:55
 9合目 12:09
 粟ヶ岳山頂 12:22 12:51
 粟薬師 13:57
 五百川登山口 14:46

  粟ヶ岳は新潟県加茂市と南蒲原郡下田村との境にあり、阿賀野川の支流早出川の上流を取り囲む川内山塊の最高峰で、日本三百名山の山である。加茂市側と、下田村側双方から登山ルートが拓かれ、どちらもGW中に山開きがあるとのこと。われわれは下田村の五百川登山口から登ったのだが、今日が山開きの日だという。

  1合目の登山者用駐車場まで車を乗り入れると、運良く1台分のスペースがあり停めることができた。登山口に立つ“トレッキングガイド”によると粟ヶ岳山頂まで4時間と書かれている。身支度を整え9時少し過ぎに出発。


  しばらくは車が通れるほどの広い道を行く。ショウジョウバカマ、キクザキイチゲ、カタクリなどが咲き乱れている。2合目標柱を過ぎ、猿飛滝を見下ろす辺りには、イワウチワ、キバナイカリソウと次々と山野草が姿を現す。八汐尾根と書かれた3合目を過ぎると新緑の中にタムシバ、オオカメノキ、ツツジなど木の花が目に付く。路端には登っても登ってもイワウチワの大群落が続いている。

  粟石跡なる4合目を過ぎるとちょっとした岩場となり展望が開ける。緑に覆われた山々の向こうに真っ白な守門岳がなだらかな山容を見せている。傍らにはピンクのイワナシが咲いていた。しばらく行くと登山路から左に少し離れて水場がある。そこから10分ほどで5合目の粟薬師に着く。

  粟薬師は一面雪に覆われた広場で、若いブナ林に囲まれた中央に小さな祠が祀られている。祠の左側には二階建ての避難小屋が建っている。小屋の前で一休みして出発。雪は祠周辺からしばらくの平坦部のみで、再び地路となる。

  芽吹きはじめたばかりのブナの幼木の根元に、相変わらずイワウチワの群落が見られる。田中澄江氏の“花の百名山”によると、イワウチワは東京都の大岳山(1266m)になっている。はじめてこの山でイワウチワを見たかららしい。“新・花の百名山”では、雲取山となっているがどちらの記述も、粟ヶ岳のイワウチワ群落の見事さには遠く及ばない。

  天狗の水場なる6合目辺りから完全な雪路となる。疎林となった雪の尾根路の行く手には粟ヶ岳と思しき山頂、振り返れば新潟平野が一望できる。花の山から雪と展望の山への変わり身の見事さに感動する。雪路はしっかり踏み込まれていて歩きやすく、しばらく快適なスノウハイクを楽しむ。今日が山開きなのも頷ける。

  しばらく行くと、多くのハイカーが休んでいる。家族連れも目に付く。その先は、“牛の背”といわれる雪に覆われた痩せ尾根、まるで雪のナイフリッジに見える。心の内では「えらいところに来てしまった」と、ため息が出る思いだがおくびにも出さず、ひたすら前の人の足元を見て進む。肩幅ほどの雪稜の路。左右は雪の急斜面だが、多くの人に踏まれたせいか遠目で見た感じたほどの怖さはない。

  昼食後、記念の集合写真を撮り下山にかかる。往路を戻るのだが、9合目までこれほどの急傾斜とは思わなかった。慎重に下るにつれしだいに風が強くなる。嫌でもあの“牛の背”の通過が思いやられたが、山頂稜線から右に折れると風も弱まりとりあえず安堵する。

 “牛の背”を目前にし、リーダーから安全のため登りではまったく使わなかったアイゼン装着を指示される。再び、緊張の雪稜歩きだが、やはり一度通った路は気楽だ。“案ずるより産むが易し”で無事通過する。“牛の背”手前にいた家族連れが、われわれを見て「もお帰ってきたよ!」と言っていた。彼らは“牛の背”手前で引き返すようだ。

  “牛の背”の難所をこなし不安も解消。新潟平野を正面に見ながらの急斜面が続くので、アイゼンはつけたまま雪の尾根路をウキウキで下る。6合目手前辺りでアイゼンを外す。しばらく下ると、粘土質の土に雪解け水が流れ非常に滑りやすくなる。下りの“牛の背”以上に慎重な足運びを強いられる。


  気持ちよい芽吹きのブナの林を抜け粟薬師を通過し、薬師の水場で喉を潤し一休み。あとは、ひたすら登山口目指して往路を戻る。全員揃うのを待って今日の宿、守門温泉 青雲館に向かう。

  9合目から山頂までの急斜面に雪はなくひと登りで山頂に着いた。優に50人はいると思えるほど多くのハイカーが休んでいる。まさに360度の大展望。山頂に設置された方位盤で確かめるも馴染みのない山が多く、よくは分からない。思いもかけず山仲間のM.Mさんに出会う。数人の仲間と来ているようだ。少し言葉を交わし、互いに無事の下山を願って別れる。

 100m近い危険地帯を過ぎホッとする。笹原の中を左に折れ山頂からの稜線に出ると9合目標柱。7・8号目標柱は雪の下だったのか見当たらなかった。多くのハイカーが最後の登りに備えて休憩しているのを横目にそのまま山頂を目指す。

登山口駐車場

粟ヶ岳山頂

アイゼンを着けて“牛の背”に向かう

快適な雪の稜線漫歩

振り返り見る粟ヶ岳