行  程
場 所 着時刻 発時刻
 夜叉神峠登山口 9:39 10:02
 夜叉神峠小屋 10:53 11:02
 杖立峠 12:03 12:10
 苺平 13:30
 南御室小屋 13:55 14:02
 薬師岳小屋(泊)  15:15 5:51
 薬師岳 6:00 6:03
 観音岳 6:29 6:53
 垢抜沢ノ頭(地蔵岳往復) 7:58 8:41
 高嶺 9:21 9:30 
 白鳳峠 10:12 10:15
 広河原 11:48 12:00

【鳳凰三山】白峰三山展望と白砂の稜線歩き

山 名  薬師岳、観音岳、地蔵岳
山行日  2002年10月17,18日
天 候  晴れ
歩行時間  1日目:5時間13分(含休憩)
 2日目:5時間58分(含休憩)
コース 登山口→夜叉神峠→杖立峠→苺平→南御室小屋→薬師岳小屋(泊)→薬師岳→観音岳→赤抜沢ノ頭(地蔵岳往復)→高嶺→白鳳峠→広河原
一浴温泉情報
御勅使川温泉
山渓園
tel:055-288-2600 10:00-18:00 \550  南アルプス山麓・山岳公園の玄関口にある県道沿の芦安村営日帰り温泉施設。「御勅使」と書いて「みだい」と読む。畳敷きの休憩室もあるが別料金。窓辺に浴槽があり6,7人が限界の広さ。湯は無色透明、無味無臭、循環式。
 桃の木温泉 山和荘 tel:055-288-2306 10:00- \1000
南アルプス山麓の白鳳渓谷に囲まれた、閑静で素朴な湯。源泉100%、高アルカリ性単純温泉で源泉は43度、飲用可。日本秘湯を守る会
 御座石鉱泉 tel:0551-27-2018 \1260  鳳凰小屋経営者の姉が経営する鉄筋3階建の近代的な鉱泉宿。浴室は1つだけのようで、札を返して男女別に利用。湯船は4人も入ればいっぱい。鉱泉のせいか湯はぬるめ。
 青木鉱泉 tel:0422-51-2313 7:00-21:00 \1000  鳳凰三山の東山麓にあるカラマツ林に囲まれた静かな鉱泉宿。本館は明治初年の創業当時を復元した釘を使わない挿し鴨居造り。湯船は大人3〜4人分くらいの広さ。お湯は鉱泉を40℃くらいに沸かしていて無色透明無味無臭。

 水曜日(10/16)、夜半の豪雨で塵がなくなり抜けるような青空が広がる。天気予報によると翌日も全国的に快晴、土曜日までは天気が良いとのこと。「そうだ! 山へ行こう」、青空を見て突然そう決心した。定年退職して一ヵ月半、何の制約もなくやりたいことがやれる。決断即実行、この気持ちを大事にしたいと直ちに登山コース、山小屋、バス時刻表などを調査した。行き先はマイカーで容易に行ける南アルプス鳳凰三山。たった一つの難関は定年退職後、山歩きが連続しているので家内にちょっと言い出し難くいことだけだ。

 単独での小屋泊まりは7年ぶり2回目。7年前は熱病にかかったように山歩きをしていた頃のこと。いわゆる「めくら、ヘビに怖じず」で、情熱だけを武器に単独で日本第二の高峰、北岳に登り肩ノ小屋に泊まって以来のことだ。その後、さまざまな経験をすることで山の怖さを嫌というほど知り、臆病で体力のない私としてはとても単独での小屋泊まり山行は考えられなくなっていた。制約のなくなった今こそ、ほんの少しの勇気を出すことで新しい世界が開けるかもしれない。ワクワク・ドキドキの世界だ。

 自宅から約135km、3時間半で夜叉神峠口の駐車場に着いた。紅葉時期の好天、平日だが駐車場はすでに8割ほど停まっていた。身支度を整え、10時出発。夜叉神峠まではなじみの路。幅が広く歩き易い峠路をゆっくりと登る。歩き始めはいつもゆっくり、何人かに追い越されたが、夜叉神峠までと思われるにわかハイカーも多く、追い越しもした。50分ほどで夜叉神峠小屋に着いた。野呂川を隔てた青空の下、白峰三山が連なっている。荷降ろし中のヘリコプターの強風が、火照った身体を冷やしてくれた。

夜叉神峠から望む北岳と間ノ岳

 峠からは尾根を北へと歩く。比較的傾斜のゆるやかな樹林帯の路。さわやかな風にあたりながら1時間ほどで杖立峠。きわめて順調だ。ここまで、ほとんど息を切らすことなくゆっくり歩けた。昼食休憩をしていると、単独行の男性が「もう少し先に行くと展望がよいところがあるはずです」と言って、立ち止まらずに通り過ぎた。

杖立峠を出て10分ほどすると単独行の男性が休んでいた。「展望が開けるのはもう少し先のようです」と彼は言う。そこまで我慢できなかったようである。10分ほどして樹林が切れ展望が開けた。一気に明るくなり左手に北岳、間ノ岳が望める。山火事の跡だそうだ。休憩には最良の場所だろう。

 再び樹林帯の路になるが樹間に北岳、間ノ岳が見え隠れしている。あたりは見事な紅葉だが枯れているところもあり盛りは過ぎているようだ。昨夜、薬師岳小屋に泊まったと言うご夫婦とすれ違う。「小屋は水が不自由で夕食はとても粗末だった、ご飯も芯があり往生した」とのこと。聞きもしないのに教えてくれたのは何かを訴えたかったのだろう。

 樹林帯の中の歩き易いしっかりした路をひと登りすると苺平にでる。霧が出はじめいっそう静けさを増したシラビソ林の中の路をゆるゆると下っていくと、ポッカリ開けた南御室小屋の建つ平地に出た。ここに泊まる予定だったがまだ2時前である。薬師岳小屋まで行くことにした。小屋の親父さんから「そこに予約の記帳をして下さい」と言われ、寝具付き素泊まりを予約した。「薬師岳小屋には水がありませんので承知してください」と言われ、ここまでほとんど水を飲まなかったことに気づいた。息が切れない程度に歩いたので汗もほとんどかかなかった。「水はほとんど使ってないナ」と応えたら、「それを捨てて、汲み替えて行きなさい」と勧められ、入れ替えると共にたっぷりと飲んだ。美味しかった。

杖立峠への路を振り返って

山火事跡から見る白峰三山

 小屋の裏からいきなりの急登だが10分もしないうちに落ち葉の積もった平坦な路になる。霧が濃くなり雰囲気はさらに良くなる。ゆったりとした上り下り、くねくねと曲がる路。静かだ。自分の足音だけが耳につく。やがて森林限界。ガスで視界はない。がまの岩を過ぎてしばらくすると、薬師岳小屋10分の表示板、すっかりガスに巻かれたがここまでくれば不安はない。岩に印された赤ペンキマークをしっかり確認しながら滑りやすい白砂の路を行く。岩を登りきると左下方に薬師岳小屋が見えた。ここは携帯電話が通じる。小屋が直ぐそこに見下ろせることなど無事を家に連絡した。

苺平を過ぎた辺りの路

南御室小屋

 薬師岳(2780m)直下に建つ薬師岳小屋の同室者はご夫婦6組と単独行6名。内2名は女性のひとり歩きだ。お二人とも、単独で登ることに何のためらいもない。福岡からの単独行の女性はツアーで苗場山と巻機山に登った後、おひとりで谷川岳に登りここに来たそうだ。「すごいな〜」、ただただ感心するばかりでした。

薬師岳小屋まで10分の標識

 翌朝、小屋から10分ほどの薬師岳山頂に着いた時、ちょうど日の出の時間だったが濃いガスのため展望はない。朝食は観音岳でと、先へ進む。観音岳山頂もまだガスの中。朝食をとる間に晴れるだろうと期待したがダメだった。白ザレの路を急降下し赤抜沢ノ頭に登り返す頃からようやく北岳が姿を現す。白ザレの斜面に生えた色づいた木立。その向こうには霧に見え隠れする地蔵のオベリスク。いつまでも記憶に残る風景だ。

薬師岳山頂での日の出

 赤抜沢ノ頭から地蔵岳を往復する。地蔵尊が置かれた賽の河原からオベリスクの基部まで登り返すと、赤抜沢ノ頭越しに北岳が頭を出した。岩塔登りは諦めて赤抜沢ノ頭まで引き返す。北岳、甲斐駒は良く見えるが、観音岳の頂上部分のみ相変わらずガスにおおわれている。

垢抜沢ノ頭(地蔵岳分岐)

賽の河原より地蔵岳オベリスク

 岩稜帯を上下し高嶺山頂。急斜面の岩下りを終え広々と明るい安心の稜線を下ると白鳳峠に着く。時刻は10時12分。広河原からのバスは12時発。発車まで2時間を切っている。広河原まで概ね2時間と考えていただけに微妙な時間だ。とにかく、急がず休まずで下ることにする。以後、焦らないために時計はいっさい見ないことにする。北岳を正面に見て岩屑の斜面の踏み跡をたどる。樹林帯に入ると急降下となる。ひんやりとした空気、かすかな鳥のさえずり、苔むした地面。「山梨の森林百選 白鳳峠のシラビソ」の表示板があった。雰囲気に浸りながら無心で下っていると突然、ガサガサと大きな音がする。ドキッ!。姿は見えない、クマではないと思うがしばらく大声を出しながら下る。

高嶺を挟み左に北岳、右に仙丈・甲斐駒

 下から20歳前後の2人が登ってきた。「この先も険しい登りが続くのでしょうか?」とうんざり顔で聞かれた。「険しい?、樹林帯を抜けるまでは少々急斜面だけど、その先は白鳳峠まで岩屑の比較的ゆったりした登りです」と応えると、安心した風だった。まもなくして彼らの言っていることが分かった。梯子場、ロープ場の難所が連続する。ぐんぐんと高度を下げやがて瀬音が近づく、この辺りの紅葉は見ごろだ。再度、緊張の岩ガレの急斜面を下ると程なくして登山口の舗装道路に着いた。11時40分。バスに十分間に合った。12時のバスを逃すと、次は15時40分。正直、ホッとした。
 夜叉神峠口で車を回収し、芦安村営温泉 山渓園で汗を流し帰路に着いた。

renew:2013/09/03

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