行  程         アクセスカウンター
場 所 着時刻 発時刻
 上高地バスターミナル 9/20 5:25 6:02
 岳沢ヒュッテ 8:23 8:37
 前穂高岳(3090m) 12:12 12:22
 奥穂高岳(3190m) 14:36 14:53
 穂高岳山荘(泊) 15:33 9/21 6:00
 涸沢岳(3110m) 6:20 6:25
 北穂高岳(3106m) 8:33 8:51
 南岳(3033m) 12:35 12:42
 中岳(3084m) 13:51 13:55
 大喰岳(3101m)  14:37 14:42
 槍ヶ岳 15:46 15:55
 槍岳山荘(泊) 16:17 9/22 6:31
 横尾山荘 10:20
 徳沢 11:06 11:35
 上高地バスターミナル 13:10 13:20

【穂高岳〜槍ヶ岳】3000m峰 8座の縦走

山 名 (前・奥・北)穂高岳、涸沢岳、南岳、中岳、大喰岳、槍ヶ岳
山行日  2002/09/20(前夜発)〜09/22
天 候  晴れ
同行者  山の仲間13名
コース 上高地→岳沢ヒュッテ→前穂→奥穂→穂高山荘(泊)→涸沢岳→北穂→南岳→中岳→大喰岳→槍ヶ岳→槍岳山荘(泊)→横尾→徳沢→上高地
一浴温泉情報
 上高地温泉ホテル tel:0263-95-2311 12:30-15:30 ¥600
 上高地に唯一湧いている天然温泉。「梓の湯」と「焼の湯」が男女日替わり。露天風呂には二種類のお湯が引かれている。透明の湯と灰緑濁の湯で両方とも掛け流しです。
 中の湯温泉 tel:0263-95-2407 12:00-17:00 ¥500  
 焼岳の登山口として利用されてきた山の宿だが、安房トンネルの工事に伴い梓川沿いの場所から山の上に移転。秘湯の湯に相応しくない近代的設備を持つ旅館。午後になるとザックやピッケルを持った登山客が汗を流しに立ち寄る。露天風呂から穂高岳が見える。
さわんど温泉
梓湖畔の湯
tel:0263-93-2380 7:00-18:00 ¥700
 上高地を訪れる際の交通の基点。平成10年、安房トンネル掘削に伴い湧出した高温の温泉を約7km引湯して「さわんど温泉」誕生。

2日間で 3000m峰 8座の頂を踏む。天候に恵まれ、飛騨泣きの難所などスリルいっぱいのコースを楽しんだ。

奥穂高岳山頂より槍ヶ岳へと続く稜線

【上高地〜前穂高岳】
 メンバーは13人。内、初穂高は2人だけ。前夜発のバスで上高地着5時半。天気は上々、焼岳に朝日が当たり輝いている。早朝6時、期待と不安の一歩を踏み出す。河童橋から見る荒々しくも雄大な穂高岳に胸は否応なく高鳴なる。

河童橋付近から仰ぎ見る穂高岳

穂高、岳沢登山口(原生林へ)

振り返り見る霞沢岳(左)、乗鞍岳(中)、焼岳(右)

【プロローグ】
山の会に入会し、山に魅せられ7年になる。山好きなら誰もが憬れる穂高岳には一度も登ったことがない。今年7月号の会報に9月度の山行計画「北アルプス縦走、穗高連峰〜槍ヶ岳」が載った。もちろん直ぐに参加を決めた。決めてから調べてみて驚いた。3000m峰8座の縦走は体力・技術力・危険度どれも難度の高いコースだそうだ。調べれば調べるほど不安になる。まさに「石橋を叩けば渡れない」だ。山行日まで2ヶ月もある、しっかりと訓練をすることを心に誓う。しかし、山行日の3週間前、8月末日が私の定年退職日。その前後数週間の予想もしていなかった忙しさのため、あれこれ予定した訓練山行は予定の半分も行けず、準備不足のまま当日となってしまった。

 「穗高、岳沢登山路」の表示板のある登山口から 樹林帯の道となる。両側にアキノキリンソウの群落。ほどよい傾斜の登りはウオーミングアップにちょうど良い。

 本格的登りからしばらくすると展望が開け、左に屏風岩の大岸壁ジャンダルム。振り返れば、見下ろす大正池の彼方に焼岳・乗鞍岳。気分がどんどん乗ってくる。夜立ちにしては調子がよい。
 正面に岳沢ヒュッテの赤い屋根が見え沢を渡る辺りから、嫌な臭いが鼻につく。ヒュッテで薪を切るチエンソーの排気ガスの臭い、あの音と共にちょっと興ざめ。

 ヒュッテで腹ごしらえをして出発。重太郎新道はのっけからの急登。振り返り見る乗鞍岳がどんどん低くる。傾斜は容赦なくきつくなり、鎖場や梯子場も現れる。高度を稼げるのは嬉しいが突然、直ぐ前を行くK.T.さんが「痛っ!」と言って座り込む。右ふくらはぎがつったようだ。ストレッチやマッサージを手伝う。ほどなく回復。その直ぐ先の岳沢パノラマ展望台で休憩となり、ホッとする。岳沢ヒュッテと紀美子平の中間地点だ。

 なおも急登は続く。両手も使っての崖登りだ。景色を見る余裕もない。「ラク!」 直ぐ目の前をこぶし大の石が落ちていく。落石への注意も欠かせない。
 岩場の傾斜地にある紀美子平は前穂と奥穂の分岐だ。“平”と名がついているが、さして広くはない。ザックを置いて、空荷で北穂の山頂を目指す。相も変らぬ急傾斜だが空荷なので楽である。広々とした山頂はぐるり一周大展望。特に北側、穗高から続く荒涼とした稜線の向こうに槍の穂先が鋭く天を突く様はまさに絶景。燕・常念はもちろん富士山、南アルプスもしっかりと見える。

前穂高岳山頂、右のトンガリは槍ヶ岳

【前穂高岳〜奥穂高岳】
 紀美子平に戻り次は吊尾根で奥穂だ。左眼下に岳沢ヒュッテの赤い屋根。すごい高度感だ。脚に相当来ているだけに「よくも登れたものだ」と我ながら感心する。砕石帯の巻き道を行くのだが、左側は岳沢が大きく口を開けている。躓いてよろけたりすれば下手すると数百m下の谷底だ。過去何人もの人が飲み込まれているという。

 右側に涸沢ヒュッテが見下ろせる辺りが最低鞍部、ここからは気力の登りだ。長い鎖を上っても急登は続く。

奥穂高岳目指して

 南稜の頭を越えしばらくしてヒョイと前を見ると数十m先にたむろした先頭グループの傍に小さな祠ある。「奥穂山頂だ!」安堵感から気力が一気に萎む、急に足が出なくなった。写真を撮る振りをして、後続者に次々と追い抜いてもらう。
 呼吸を整え最後尾でたどり着いた山頂は日本第三の高峰、憬れの穂高岳山頂だ。空は青く澄み、北アルプス全域をはじめ、幾重にも重なる山々がどこまでも見渡せる。

 アッという間の20分、「行くぞ!」とリーダーの掛け声。もっともっと見ていたい。あとは山荘まで下るだけだが名うての難所、ひとりになるわけにはいかない。後ろ髪を引かれながら山頂を後にした。

奥穂高岳山頂直前、急に足が動かなくなる

奥穂山頂ケルン上

蝶ヶ岳からのご来光、左は常念岳(穂高岳山荘より)

【穂高山荘〜北穂高岳】
 翌朝も風は強いが天気は上々。蝶ヶ岳に昇るご来光、6時に山荘を出る。笠ヶ岳に穂高の影が映る。

 20分ほどで涸沢岳山頂。ここからは再び難所。おまけに風は強く、冷たい。鎖があるとはいえ、スパッと切れ立った垂直な岩壁下り。鎖や梯子のあるところはまだまし。「三点確保、三点確保」と呪文を唱えながら、慎重に下る。体力よりも精神力の勝負だ。岩に慣れ、疲れがたまり集中力がなくなると怖い。

笠ヶ岳に映る穂高岳の影

涸沢岳中腹から見る奥穂とジャンダルム

涸沢岳から望む、北穂高岳と稜線の先の槍ヶ岳

 岩壁下りと比べれば、北穂への登りは楽しい。涸沢分岐を過ぎると10分足らずで山頂に着いた。もちろん展望は超一級。幸か不幸か行く手に飛騨泣きの最難所もしっかりと見渡せる。左の滝谷側が切り立った岩稜線は迫力満点。改めて気を引き締め直す。

北穂高岳山頂

北穂高岳山頂からの展望。左に笠ヶ岳、右に槍ヶ岳。間は黒部五郎岳等々

【北穂高岳〜槍岳山荘】
 飛騨泣きは落ちれば一気の連続難所。細心の注意で後に続く。この頃になると、脚よりも腕が疲れてくる。一休みしたA沢コルの直後、ナイフエッジをこなすと大キレットの底部。比較的歩きやすい道だが、先を見れば南岳への絶壁。うわさの二段梯子も見える。まだまだ気を抜くわけにはいかない。

難所の飛騨泣き

ナイフエッジを越える

大キレットへ

 南岳への絶壁、岩に密着した長梯子は足がかりが浅い上にぐにゃりと曲がっていてちょっと怖い。梯子を上ると一見渡れそうにない岩棚、さらに岩屑の多いスラブ帯へと続く。すっかり慣れたせいかけっこう楽しくもある。
 「難所終了、南岳小屋10分」の表示板に思わず笑みがこぼれる。ここからはのどかに歩ける。行く手には南岳の向こうに槍ヶ岳、右に常念、左は笠、後方に西穂のロープウエイも見える。脚はさておきルンルン気分だ。
 なだらかで広い山頂の南岳を越え、中岳との鞍部で一休み。ちょっと遅れ気味のMさん夫妻が到着するのを待って中岳へ向かう。昨年、開通した新コース。緊張感から解放され足取り軽くといきたいが、だらだらした登りがけっこう辛い。足が出ないでアゴが出る。

南岳への長い梯子

 中岳山頂はガスの中。視界は50mほど。ここまで来れば終わったようなもの。すっかり気が緩んだのかO.A.さん、滑って岩の間にお尻がスッポリ。身動きできず手足をばたつかせ、皆の笑いを誘う。もちろんかすり傷もなく、緊張感が緩んだ安堵の笑いだ。

 ガスは出てきたものの流れは速い。右下方に万年雪が見える辺りで一休みし、難なく大喰岳山頂。目の前の槍はすっかり姿を隠している。あとは今夜の宿、槍岳山荘に行くだけ。霧に見え隠れする槍ヶ岳の手前の小さなピークに、鮮やかな一塊の紅葉。リーダーが寄り道をしてウラシマツツジと確認する。

みな安堵の表情、中岳山頂

【槍ヶ岳】
 槍岳山荘で宿泊手続きをし、槍の穂先に向かう。岩登りに慣れきったのか緊張感が無いことにハッとし、「三点確保」も気持ち新たに岩に取り付く。
 午後も4時近いとさすがの山頂も人は少ない。霧で展望はいまひとつだが、突然、傍らに座った人が「ブロッケンだ!」と、叫ぶ。祠に向かって右下方、小さな虹の輪の中に一瞬それらしき影を見る。カメラを用意する間もなく消えたが、しばらくしてまた小さな虹の輪。その下に槍の穂先のシルエットがしっかりと確認できた。

【槍岳山荘〜上高地】
 最終日、ご来光は期待できそうもなが、槍ヶ岳山頂への岸壁に灯りが4・5ヶ所見える。昨日、槍ヶ岳に登らなかったMさん夫妻とリーダー、それに2人の元気な女性K.F.さんとO.N.さんが朝食前に槍ヶ岳に登る。皆が戻るまでK.Hさんと山荘の喫茶室でコーヒー(¥400)を飲みながら待った。今日は、上高地まで22kmを下るだけ、気楽なものである。
 6時半、山荘出発。1時間ほど下ると槍ヶ岳を目指す人が次々と登ってくる。杖代わりの枝がそろそろ邪魔になってきたのかO.A.さん、あまりに太い枝を杖代わりに登ってくる小6くらいの女の子に杖をあげることにする。その女の子が偉かった。自分の持っていた杖を「捨ててもいい?」と母親に聞いてから、そっと道端に置いていた。

 ナナカマドの真っ赤な実、草紅葉しはじめたカールの斜面。深まりゆく秋の色合いが美しい。槍沢ロッジの前に設置された望遠鏡を覗くと、槍の穂先にいる人の姿がはっきり見える。横尾、徳沢とどんどん人が多くなる。明神、河童橋付近は人でごったかえしている。穂高岳は雲の中。さっさと待機のバスに乗り、中の湯温泉で汗を流し大幸運・大々満足の山行を締めくくった。

ナナカマドの赤い実と淡い草紅葉

槍ヶ岳山頂

renew:2013/09/03