行  程
場 所 着時刻 発時刻
 峠の茶屋 4:12  5:00 
 峰の茶屋避難小屋 5:42  5:55 
 茶臼岳 6:25  6:32 
 峰の茶屋避難小屋 7:00  7:11 
 朝日岳 7:51  7:55 
 三本槍岳 9:01  9:10 
 食事休憩(分岐東) 9:33  9:50 
 北温泉 11:52  12:45 

【那須岳】印象深い暴風とゴヨウツツジ

山 名  茶臼岳、朝日岳、三本槍岳
山行日  2002年5月25日(前夜立ち)
天 候  晴れ(強風)
同行者  いつもの山の仲間
歩行時間  6時間53分(休憩含む)
コース  峠の茶屋→峰の茶屋→茶臼岳→峠の茶屋→剣が峰→朝日岳→三本槍岳→清水平→北温泉道→北温泉
一浴温泉情報
 北温泉 tel:0287-76-2008  8:30-16:00 \700    古い木造の宿で、薄暗い廊下に灯明がゆらめき、神棚や骨董品のような仏像が奉られている。薄暗がりの「天狗の湯」はもと山伏の修験場だそうだ。石鹸もシャンプーもない。紛れもなく古くからの由緒正しい霊泉の宿。たびたび撮影に使われることもうなずける。
 三斗小  屋温泉
 草履屋
tel:0287-69-0882  \500  江戸時代、会津と関東を結ぶ街道の要所として栄えたという三斗小屋温泉は、歩いてしか行けない山の秘湯。会津駒まで見渡せる露天風呂は混浴(15:00-17:00 女性専用)。21:30 以降はランプの灯りのみになるので、懐中電灯必携。

 那須岳はいくつかの山々を合わせた総称で、その主峰は茶臼岳、朝日岳、三本槍岳だ。那須岳名物の強風の中、三山を巡りゴヨウツツジの咲き乱れる道を北温泉へと下った。

茶臼岳山頂

 静岡市役所前を前夜10時20分頃出発して約6時間、峠の茶屋に着いたのは夜明け間近だった。半年ぶりの夜立ちの山歩き、いつもながらバスでは一睡もできない。小雨がぱらつく広い駐車場に20台ほどの車が駐車していた。予報では北海道を除き全国的に晴れのはず、食事をする間にいつしか雨はやんでいた。

峠の茶屋駐車場

 駐車場上の鳥居をくぐり木の階段を登り、しばらくすると森林限界に出る。右手は谷を隔てて赤さびたような岩肌の朝日岳が見える。火山特有の岩だらけのザラザラした道だ。登るにつれ風が強くなり時折、雨やあられが降ってくる。G.Mさんが傘を取り出したが余りの風にすぐにあきらめてしまった。初参加の前回、雨の鈴北岳〜御池岳で他のメンバーが傘をさしながら歩いていることに感心していたが今回、さっそく山用の傘を用意したようだ。

 真正面に峰の茶屋避難小屋が見える。夜立ちのせいかさっぱり調子が出ない。最後尾でゆっくり登ることにする。風はだんだん強くそして冷たくなってくる。岩に印された黄色の目印を見ながら黙々と登る。

登山口

 峠の避難小屋の中には大勢の人がいた。小屋の中の寒暖計は5℃、外は0℃だそうだ。茶臼岳を見上げると、噴煙が強風で真横になびいている。登りはじめるとかすかな硫黄の臭い、一瞬でガスに覆われる山頂。と思うそばから、瞬く間にガスが除かれロープウエイ駅の駐車場が見下ろせる。ガスの幕合は忙しい。風は相変わらず冷たい。

正面に峰の茶屋避難小屋の屋根が見える

噴煙なびく茶臼岳

 鳥居をくぐると山頂はすぐだ。那須岳神社の石の祠がある。全員そろっての記念撮影、カチャ!、シャッター音の直後、三脚のカメラが風に煽られ真後ろに倒れる。
 余りの強風に茶臼岳の西側を回り込む周回は止めて来た道を引き返す。はじめの頃は「これが有名な那須岳の強風か」と、楽しんでいたのだが、身体ごと吹き飛ばされそうな暴風がしだいに恐ろしくなってきた。時折、身を縮めて風をやり過ごしながら避難小屋まで戻る。

峰の茶屋避難小屋に戻る。右は朝日岳

 峰の茶屋を後に剣ヶ峰の東斜面を行く。風がなくなりホッとする。谷を隔てた茶臼岳の山腹に、峠の茶屋から峰の茶屋へと定規で引いた直線のような登山道を、何組ものパーティーがアリの行列のように登っていく。

 風の次は、急斜面の雪渓のトラバースだ。足を踏み外したらそのまま谷底への大滑落は間違いない。わずか10m程度の雪渓だが、踏み跡が削れたようなところもありむちゃくちゃ緊張する。あの強風とこの雪渓、ひとりだったら間違いなく引き返していただろう。

茶臼岳山腹の峠の茶屋〜峰の茶屋登山道

雪渓のトラバース

朝日岳山頂より茶臼岳を望む

 朝日岳への登りは恐怖を覚えるほどの暴風の中、急斜面の痩せた岩場に付けられたクサリ場の鉄杭を頼りに慎重に登る。風に煽られれば、身体ごと崖下に持っていかれそうな気がする。クサリのあるところはまだよい、平坦とはいえ稜線の通過は困難を極める。身体を低くし足を踏ん張り歩き出すも、一瞬勢いを減ずる風にバランスが崩れハッとしてその場にしゃがみ込む。匍匐前進したいくらいだが、先行した連中がこっちを見ているので自重した。

三本槍岳(上)、同山頂(下)

 メンバーには小柄な女性も多いのだが、誰ひとり弱音を吐かない。私も黙っている。念のため言っておくが、「恐怖で口がきけない」わけではない。
 朝日岳への分岐で一息入れる。リーダーから「頂上への往復は希望者だけ、他の人はここで待機するように」と告げられたが、だれひとり待機する者はいない。これまでで強風への対処を身につけたのか、やけくそなのか・・・。

 朝日岳から先はアルペン的雰囲気から開放され、風もいくらかは弱くなったせいか大分楽になる。ササの中、階段状の急斜面を下って、幅広い木道が敷かれた清水平を過ぎるとまもなく北温泉への分岐に着く。これを左に折れ、三本槍岳をピストンする。緩やかな丘を一旦下って鞍部から登り返したところが三本槍岳山頂。槍のイメージのまったくないなだらかな山頂であり、火山の特徴もない静かな雰囲気の山だ。聞くところによると、三本槍岳は昔、三藩(会津・白河・黒羽)が境界を確認し3本の槍を立てたことによるそうだ。
 分岐まで戻り、左折し北温泉に向かう。少し登ったササ原の中、白い雲を浮かべた青空の下での食事休憩。あとは温泉まで下るだけだ。本山行中、最ものんびりしたひとときだ。

 北温泉に向かう下山路の中ノ大倉尾根コースは右に茶臼岳・朝日岳、左には赤面山を見ながらの快適な下りだ。ミネザクラやシャクナゲの咲く道でもあり、すれ違うハイカーも多い。樹林帯に入ると、ゴヨウツツジ(シロヤシオ)が咲き誇っている。青空の下、鮮やかな新緑越に茶臼岳が見え隠れする。

シャクナゲと赤面山

シロヤシオと茶臼岳

 北温泉は歴史を感じる旅館だ。薄暗く怪しげな雰囲気の狭い廊下を迷路のようにめぐり、大きな天狗の面が掛けられた湯船にたどり着く。湯量は豊富、混浴だそうだ。その先には打たせ湯と内鍵が掛けられる家族風呂がある。石鹸もシャンプーもない。打たせゆで頭から湯をかぶった。
 温泉を出てバスまでもうひと歩き。振り返ると鮮やかな緑の谷間に、秘湯の一軒宿が見下ろせる。

天狗の湯

谷間の一軒宿、北温泉旅館

renew:2013/09/03

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