山 名 | 笊ヶ岳(2629m) | ||
山行日 | 2001年7月21日(土) | ||
天 候 | 晴れ(山頂曇り) | ||
同行者 | 会社の山仲間(男性6人、女性4人) | ||
歩行時間 | 12時間12分 | ||
コース | 椹島⇔1857峰⇔笊ヶ岳 |
行 程 | |||
場 所 | 往路(着) | 復路(着) | |
椹島キャンプ | 発 5:17 | 着17:29 | |
笊ヶ岳登山口 | 着 5:31 | 17:16 | |
鉄塔 | 5:51 | 16:57 | |
1857m峰 | 7:37 | 15:37 | |
最初の沢 | 8:16 | 15:04 | |
最後の沢 | 9:40 | 13:57 | |
涸沢台地 | 10:00 | 13:33 | |
稜線(椹島下降点) | 11:11 | 着12:58 | |
笊ヶ岳山頂 | 着11:49 | 発12:37 |
交通 | JR静岡駅→畑薙第一ダム:3時間30分 静岡鉄道バスセンター;054-252-0505 | |
畑薙第一ダム→椹島:50分 東海フォレストサービス事業部;0547-46-4717 | ||
マイカー | 畑薙第一ダムに駐車スペース有り |
【笊ヶ岳】あこがれの山に、椹島から日帰りピストン
30代前半から50代後半まで、会社の山仲間10人で椹島に2日間キャンプし、中日に軽装で笊ヶ岳をピストンした。
笊ヶ岳山頂
20日午後、椹島に入りキャンプを張る。足慣らしに鳥森山をピストン。赤石岳・聖岳を見ることができた。夕食後の宴会は翌日のハードスケジュールを思い早々に切り上げる。
翌21日4時過ぎ起床、手分けして朝食の準備。キャンプに慣れた人が多く手際がよい。予定よりも早く出発できた。
怪我などでここ数ヶ月、山歩きがままならなかっただけに本日の笊ヶ岳往復はとても不安である。救いはピストン登山。無理を自覚すればいつでも戻れる。水2リットル、昼食と行動食・非常食、懐中電灯、雨具など必要最小限の荷にして出発。
鳥森山より赤石岳を望む
林道までひと登り、滝見橋を渡ると直ぐ右に笊ヶ岳登山口がある。入口の案内板に「上り7時間、下り5時間、椹島〜笊ヶ岳のコースは難易度が高く、滑落危険個所が多い上級者向けです」と書かれている。熱海の自殺の名所、錦ヶ浦などに立つ「ちょっと待て、もう一度考えよう」の呼びかけ板を連想させる。「往復12時間、上級者」覚悟していることとはいえ改めて気を引き締めての挑戦だ。
いきなり自然林の中の急登。長丁場を意識し、はじめはとにかくゆっくり登る。前の人と少しくらい離れても気にしない。自分のペースで登る。「またぎ」みたいと言われているO.S.さんが最後尾なので安心だ。
苔むした岩が点在するやや歩きにくい道を過ぎると鉄塔着。一休みして尾根道を少し行くと、コッフェルにヘルメットの屋根をかぶせた巣箱がある。余りのユニークさに、笑みがこぼれ、辛い登りが和む。しばらくすると右手に昨日登った鳥森山(1571m)が見える。こちらの方がまだまだ低い。天然林の中、かわいらしい鳥のさえずりに励まされ、確実に高度を稼ぐ。辛い急登が続くが、誰も弱音をはかない。負けず嫌いの意地っ張りが多い。自分から「休もう!」と声を出すのが嫌なのだ。自分以外の誰かが「休もう!」と言ってくれるのを歯を食いしばって待っている。もっとも、今日の長丁場を思えば、辛いからと言って休んでばかりはいられない。リーダーの「休憩!」の声を心待ちに一歩一歩を繰り返えす。
振り返ると、真後ろに赤石岳と荒川岳の雄姿が見える。待ちわびた一瞬。たっぷりと汗をかいたが、時計を見ると、いつも通勤で家を出る時間前。一日の長さを実感する。
地図にある1857峰はいつの間にか通り過ぎたようだ。上りがゆったりとした下りに変わる辺りがそうだったのだろう。登山口から笊ヶ岳山頂までの標高差(1529m)のちょうど半分の標高を稼いだことになる。これまでの道はよく踏まれているし、木の幹や岩などの見通し距離内に赤ペンキがマークされている。万一、ひとりで戻るにしても迷う心配はない。メジャーでない行程への不安が和らぐ。
1857峰をしばらく行ったところでお化粧タイム。どさ回りの役者よろしく日焼け止めクリームをたっぷりと刷り込む(樹林帯が続き、結果としては必要なかった)。3人パーティーが下ってきた、「5時に笊ヶ岳山頂を出発した」と言う。「山頂は360度の展望です」「沢の水も豊富です」とわれわれを励ましてくれた。
ちょっと長めの休憩を終えて出発。直ぐに、「笊ヶ岳まで4時間半、椹島まで2時間」と記された30cm角の真新しい立派な道標の前を通過する。概ね標準時間通りの速度だ。内心では「けっこう頑張った、少しは短縮しただろう」と、思っていただけにちょっとがっかりです。この辺りから尾根を離れ長いトラバースが始まる。最初の沢まで15分足らず。途中、オレンジ色のテントが張られていた。
2つ目の沢を越えてしばらくすると正面に滝が見える。滝を目指してまっすぐ進むが、道はだんだん荒れてくる。行く手に赤ペンキが見当たらない。先頭を行くリーダーのT.H.さん、みなを待機させルート探索。われわれは手ぬぐいを裂いた目印の細布を枝に縛り付けた。最後尾のO.S.さんは来た道を戻り、1mほど下の木に印された赤ペンキに気づく。正規のルートが見つかった。多くの人が滝を目指して真っ直ぐ進むのだろう。クランク状のちょっとした分岐が分かりにくかったようだ。縛り付けた目印を外してバックする。
4番目の沢
滝の下の沢を渡るとかなりの急登。次の沢で水汲み休憩。そこから少し行くと道が広くなっていて、大きなザックがデポされていした。おそらくここにテントを張り、荷造りをした後、頂上に向かったのだろう。
シャクナゲの群生地を過ぎると正面に笊ヶ岳が見える。水量の豊かな沢を2つ渡り、急登すると笊の左に小笊も見える。水量の少ない6つ目の沢を越えて20分ほど行くと、明るく広い涸れ沢。対岸に上ると偃松尾の大ガレが見渡せる、幕営に最適な広いスペースがある。「笊ヶ岳まで2時間」の表示。トラバースは標高2000mあたりでのアップダウンの繰り返し。ずいぶんと緊張したのに高度は少しも稼せいでいない。
水の無い沢を詰めるとゴゼンタチバナが群生するシダの生い茂る林に入る。これを登り切ると待望の稜線に出た。見下ろす山梨県側はガスで真っ白。何も見えない。転付峠へ続く尾根はしっかりと見えるが、赤石・荒川も中腹より上はガスで隠されがちだ。
幕営スペースから偃松尾の大ガレ
頂上に先客2人。姿の見えない赤石岳方面を見ながら座っている。老平から登ったそうだ。山梨側は小笊ヶ岳が見えるだけ。その小笊さえも直ぐにガスに隠れてしまう。先客の一人が、常念岳にいる友人に携帯電話をかけ「槍ヶ岳がよく見える」と言われ悔しがっている。われわれも悔しい。
稜線から生木割と偃松尾
一辺40cmほどの立派な山頂標柱は赤石岳を向いている。静岡県のものだろう。山梨県側を向いた山梨百名山の山頂標柱は根元で折れている。上下2分割して担ぎ上げたようだが、その接続部分が外れたのだろう。
昼食後出発。または来られないだろう。あこがれていた山だけに赤石岳・荒川岳を見ないで下るのが心残りだ。
稜線上までガスが上がってきている。涸れ沢上のテント場まで一気の下り。幕営中のご夫婦の他に一張りのテントが張られていた。一休みして出発するとき、またぎのO.S.さんが「先に下り食事の準備をしておく」と言い走り下りていった。自分もとしばらくついていったが、直ぐに無理と悟りマイペースに戻した。下り2つ目の水量豊かな沢で顔を洗い汗を拭き水を補給しながら後続を待ち合流した。
笊ヶ岳山頂標識と小笊
アップダウンを繰り返し最後の沢を過ぎれば一安心。あとは危険の少ない尾根道をひたすら下るだけ。しかし、脚の方はだいぶ疲れている。S.S.さんが滑って尻餅をつき、「目から星が飛んだ」と言い、しばらく立ち上がらない。。最後まで気は抜けない。途中、パラパラと雨が葉に当たる音がしたが大したことはなさそうだ。登山口を出発して戻るまで11時間45分、ほぼコースタイム通りに歩いたことになり、少し自信が蘇った。
椹島ロッジの風呂は午後1時で終わり、がっかり。仕方なく河原で水浴、裸になって川に入る。水温は20度位だが冷たくは感じない。長丁場を歩き身体が火照っているのだ。ほどよくあたためられた河原の石に腰をかけると、お尻の温もりが心地よい。身体は温泉に入ったように温かく、あたる風が心地よい。狭い風呂に入るより露天の水浴の方がよほど良かった。
稜線より望む悪沢岳
最後の上りはきつい。ここでも音を上げる人はいない。頂上までの一気登り。きつい。誰も文句を言わない。なんと強情な人たちなんだ。「着いたぞ!」の声がなかなか聞こえない。気力の登りが続く。
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