高根山


 久しぶりの山歩きである.身体はすっかりなまっているし,遠くまで運転する気にもなれない.自宅から車で30分ほどの山にする.高根山は3回目だが,頂上付近を除き歩いたことのないコースとした.
 蔵田から宇嶺の滝への車道は極端に狭い.普通車がようやく通れるほどの道幅しかない.もちろんすれ違いできる場所は数カ所あるが,バックに自信のない人は蔵田の大駐車場に置いた方が無難だろう.宇嶺の滝までは歩いてもせいぜい20分ほどだ.

 宇嶺の滝駐車場は十数台は停められる.ここは東海自然歩道のコースでもあり,よく管理されたきれいなトイレもある.身支度を整え,車道を久能尾方面へすすむ.数百mほどで宇嶺橋を渡り,さらに100mほど行くとマルガシ(枝を丸く茂らせた樫の巨木)コースの分岐だ.マルガシまで700mの表示がある.

宇嶺の滝駐車場

 車道から少し下り,丸木橋を渡ると山道となる.手入れの行き届いた杉林の中のしっかりとした登山道である.小鳥のさえずりと沢の音が耳に心地よい.十数分ほど歩くと右手に小さな3段の滝がある.そこから沢を離れ,やや急な斜面を登ると林道に出る.マルガシまで左に200mの表示がある.少し行くと前方にひときわ高く枝を広げたマルガシが見える.

マルガシコースの橋

3段の滝

林道から脇に少し登る.天然記念物の樫の巨木は根回り8.3m,樹高17mと表示されていた.樫の木周りの下草狩りをしていた地元の方に聞いたが,樹齢は分からないとのこと.急斜面に樫の葉が重なり合って落ちている.丈夫でなかなか腐らないから分厚く積もってしまうのだろう.とても滑りやすいので慎重に下る.
 林道に戻り先に進むと突然,直ぐ脇を一羽の鳥がギャーギャー鳴きながらすれ違う.ドキッとさせられる.巣でも近くにあるのだろうか? 

マルガシ

 宇嶺の滝への下山道を左に分け数分で高根山の登り口に着く.道標に従い登りはじめてまもなく神社から頂上に行く道にぶつかる.山頂まで0.5Kmと表示されている.
 歩きやすいが薄暗い杉林の道を登ると,パラボラアンテナの前に出る.続いてNTTの無線中継所ととベンチがあり,その先の雑木林の中が山頂だ.周囲の展望は全くない.三角点もないので,頂上標識がなかったらとても山頂とは気づかないだろう.記念写真を撮ってしまうと,とても留まる気にはなれない.
 少し先に展望台があるらしいので,そこまで行くことにする.尾根道を下ると突然,左方面が切り開かれベンチが置いてある.広がる景色は南側だけだが,正面の高尾山と笠張山をはじめ遠方にかすんで見える山々を眺めながらラーメンをつくり昼食にする.

高根山頂

高尾山(左)と笠張山(右)

 ベンチを後に少し戻ると,Y字路がある.2.5万図にないがしっかりした道だ.真東に向かっているので,山頂を巻き直接,神社に行く道だろう.同じ道を戻ってもつまらないので,右に折れることにする.多少ガレている所もあるが,比較的歩きやすい道で,予想通り神社の裏に出た.
 説明板によると,高根白山神社は鎌倉時代初期に創建されたそうだ.本殿は江戸時代初期のものらしく年代の古さと建物規模から貴重なものらしい.
 本殿の裏山の斜面に御神木である杉の巨木が見られる.案内板の脇からガレた急斜面を登ったが,鉄条網に囲まれていて近づくことはできない.根回り8.7m,樹高は47.2mもあり巨木の多い県内でも有数のものらしい.これも樹齢のことは書いてない.
 神社の入口に御手洗(みたらし)があり,冷たい湧水が流れ落ちている.志太平野をうるおす一源で,涸れることのないご神水だそうである.ありがたく一口頂く.御手洗の右手に山頂への登山路がある.

高根白山神社本堂

鉄条網に囲われた御神木

 蔵田から神社まで2.3Km,道は舗装されている.これを少し下ると左に林道が分岐する.マルガシへの道であり,50mほど行くと先ほど登った高根山登山口,これを通過し宇嶺の滝への下山路を下る.タツナミソウが所々に群生しており,展望のある楽しい道だ.しかし,10分ほど下ると薄暗い杉の植林帯となる.沢の音が聞こえはじめるとさらに鬱蒼とした陰気な道となる.ガレ気味の急斜面を慎重に下ると車道が眼下に見える.
 下山口は朝,車を停めた宇嶺の滝駐車場だ.崖側の落石止め防護ネットの間隙から車道に出た.標識は何もないので,そこが登山口だとはとても気づかない.

 ザックを車に置いて,宇嶺の滝まで往復する.車道から遊歩道を下り,観瀑台に立って初めて東海一と言われる豪快な瀑布が姿を見せる.落差70m,水量は豊かであり真っ白な帯が新緑に映えている.
 車に戻り帰路,高根山への登山口にある鼻崎の大杉を見ていくことにする.樹齢700年,樹高27.5mと記されている.県指定の天然記念物だそうだが,確かに立派だ.風格さえある.何枚も写真を撮った.
 見応えのある巨木,標高800mに建つ由緒ある神社そして,最後は見事な滝と大いに満足した山歩きであった.

宇嶺の滝


鼻崎の大杉

行  程 アクセスカウンター    
場 所 着時刻 発時刻
宇嶺の滝駐車場 9:00 9:10
マルガシコース登山口 9:20  
林道出合  9:51  
マルガシ 10:00 10:08
高根山登山口 10:39
高根山々頂 11:02 11:09
展望台 11:16  11:55
高根白山神社 12:08 12:27
宇嶺の滝分岐 12:35  
宇嶺の滝駐車場 13:03   

・2.5万図:伊久美

参考資料 山と渓谷01年3月号「百低山巡礼-22」
交通 バス:藤枝駅〜蔵田 約1時間
藤枝駅発(午前発のみ記載): 7:15, 8:45,12:02
蔵 田 発(午後発のみ記載):12:55,14:04,15:30,16:42
静鉄バス藤枝営業所:054-641-3255
マイカー 東名高速道:焼津IC(吉田IC)〜蔵田   約26Km
国道1号線藤枝バイパス 谷稲葉IC〜蔵田 約19Km
蔵田駐車場 約30台, 宇嶺の滝駐車場 10台余
蔵田駐車場〜宇嶺の滝:徒歩約20分

【高根山】巨木と名瀑を巡る山遊記

山 名 高根山
山行日 2001年6月3日(日)
天 候 晴れ
同行者 単独行
歩行時間 3時間15分(昼食休憩除く)

 天然記念物の巨木3本を巡りながら,大小の滝と由緒ある神社を訪ねるハイキングコース.

関連情報

更新:2013/08/22