【城山、葛城山、発端丈山】絶景なり駿河湾越しの富士山

発端丈山々頂より富士山

【山 名】城山(344m),葛城山(452m),発端丈山(410m)
【年月日】2001年1月14日(日)
【同行者】単独行
【行 程】大仁駅9:55→10:20城山登山口10:25→峠10:55→11:05城山11:25→峠11:30→鶯谷(分岐)11:55→12:25葛城山12:35→鶯谷13:00→益山峠13:15→13:20益山寺13:45→益山峠→14:00発端丈山14:10→14:40三津バス停14:45⇒15:25沼津駅


城山

 修善寺や下田方面に行くとき,大仁付近で国道の直ぐ右手に大きな岩山がそびえているのが気になっていた.ロッククライミングの名所,城山(写真:右)だそうだ.「あのてっぺんに立てるのだろうか?」.
 調べてみると,城山の登り口から発端丈山を経由して内浦港の三津までハイキングコースがある.途中,城山と葛城山を往復する道もよく整備されているようであり,この時期の熟年単独行でも安心して歩けるコースのようだ.

 単独行は出かけるまでがやっかいだ.朝刊を取りに外へ出ると今日も猛烈に寒い.冷たく強い風が吹き荒れている.前々夜から,すっかり準備はできているのだが,気持ちが萎えるのがはっきり分かる.新聞とテレビの天気予報を見ても決心はつかない.中止にする口実をさがしたり,頂上でのコーヒータイムに思いをめぐらせたり,葛藤がしばらく続く.昨日も同じようにぐずたらしているうちに出かけるタイミングを失ってしまった.昨日に比べれば青空が広がっている.自宅から駅へのバスもちょうど良い.「よし,行くぞ!」

 10時前に大仁駅に着いた.ハイカーらしき人は見あたらない.電話で下山口のバス時刻を確認する.下山予定の頃は1時間に1本程度だ.
 城山登山口まで歩いたのだが,国道136号の狩野川大橋に歩道はない.ひっきりなしに猛烈なスピード(と思える)で車がすれ違う.痩せ尾根の下手な鎖場よりもよほど怖い.橋を渡り右折し,子育地蔵尊の前を通り登山口に着いた.付近に10台ほどの車が駐車してあった.

 いよいよ登り,上着を1枚脱ぎ登山開始.いつものように歩き始めはとにかくゆっくり.ヘルメットを持った若い外人の2人連れにアッという間に追い越された.桧林の登山路は薄暗くはあるが,風がないのでありがたい.
 城山の岸壁に人が張り付いている.「ちょっと待って!」「いいよ!」の叫び声に,黄色い声で「は〜い!」と応えるのを聞きながら黙々と歩く.2組のベンチが置かれた休憩所を過ぎるとほどなく城山峠に着く.城山への分岐だ.

 城山頂上に近づくにつれ木々を揺らす風の音がものすごい.顔にあたる風は相変わらず冷たい.数人の人とすれ違ったが,頂上には誰もいなかった.
 眼下には先ほど降りた大仁駅,丘の上に学校やホテルも見える.その手前には大きく蛇行する狩野川がキラキラと輝いている.背景は天城連峰.まるで箱庭のような美しさである.残念ながら富士山は厚い雲に覆われていた.

 軽い食事をして頂上を後にする.時折,嘘のように風が止み突然のように鳥のさえずりが耳に入る.10分足らずで分岐の峠に戻る.右に曲がり尾根を巻くようにゆるやかな道を行く.山陰のためか風はほとんど感じない.鳥のさえずりが耳に心地よい.林道にコースを中断されるが,林道を歩くのは10m程度,直ぐに登山路になる.葛城山の山腹をトラバース状に進み鶯谷で縦走路を右折し葛城山を目指す.杉林の中をしばらく下るのが悔しい.先ほど木の間越に見た葛城山はそこそこの標高差があるし,鶯谷まで戻るときに登らねばならないからだ.数分で舗装された林道に出た.雲のベールを脱ぎはじめた富士山を左に見ながらのんびり歩く.白波のたつ駿河湾もよく見えている.

アクセスカウンター
葛城山々頂より富士山

 林道から右に葛城山の登山路が分岐する.山頂まで30分の標示.けっこう急な登りだ.山頂は公園になっており,登ってきた道の反対側からロープウエイが通じている.茶店や遊歩道,展望台などいろいろ手をかけた山頂だけあって,半見えの富士山ながらその展望はすばらしい.富士山の手前には沼津アルプスがかしこまる.その左には駿河湾,右には箱根山から南にのびる伊豆の山々,振り返れば天城の山並みも望める.この寒さにも関わらず観光客が多いはずだ.しかしながら,登山者に場違の感は免れない.

益山寺の大楓

 鶯谷まで戻り発端丈山を目指す.15分ほどで益山峠に着いた.益山寺への分岐である.今朝,城山登山口に向かう途中,地元のハイカー風の人から「益山寺のお祭りに行く」と聞いていたので寄ってみることにした.ダルマ市だそうである.多くの人でにぎわっていた.
 天然記念物の樹齢1300年の大楓(右:写真)が見事だ.隣には大銀杏もあり,紅葉・黄葉の競演が見られるだろう秋に,是非また訪れたいものだ.境内には整然と並べられた33観音があるなど,なかなか見応えのあるお寺であった.地元のハイカーの方と風のない日だまりでお喋りし,予想外に長時間を過ごしてしまった.

 益山峠まで戻り先へすすむ.4等三角点ともうひとつかわいらしいピークを越えると発端丈山だ.富士山がすっかり姿を現している.山頂には三脚を構えシャッターチャンスを待っている単独行の人と,2人連れの先客がいた.

 入り組んだ海岸線に端正な三角錐の淡島が浮かび,そのうしろに駿河湾から長く裾を引いたほれぼれするほど美しい富士山.山頂の雪は右裾に大きくのび非対称の美を醸しだす.白波を立てる青い海と雲を浮かべた青い空とに挟まれた白帽子の富士山.伊豆八景のひとつだそうだが,まさに絶景という言葉がふさわしい.

 バスの時間にせき立てられるように山頂を後にする.山頂から数分下った所からの眺めがこれまたすばらしい.淡島と富士山と駿河湾とのバランスがよい.バスの時間を気にしつつもカメラを出さずにはいられない.
 ところどころにトラロープが張られた急斜面を慎重に下る.何ヶ所か分岐はあるが,とにかくバス停へ最も近い長浜を目指す.道標がしっかりしており迷うことはない.多少の余裕を持ってバス通りに着いた.三津バス停からバスに乗り沼津駅に向かった.