山 名 利尻山(1721m)
山行日 1999年6月20日(日)
天 候 晴れ
同行者 いつもの山仲間
歩行時間 7時間(山頂休憩時間除く)
コース 鴛泊コース

行 程
場 所 着時刻 発時刻
北麓野営場   -  5:08
甘露泉  5:18  5:25
長官山  7:15  7:25
避難小屋 7:50   
9合目 8:18  
沓形分岐 8:41  
利尻山頂 9:08 9:40
避難小屋 10:26 10:30
北麓野営場 12:40  

【利尻山】鴛泊コース往復の山行記

 6月20日,鴛泊コースのピストンで日本百名山1番目の山,利尻山に登りました.頂上付近で両脚とも「ツル」苦しみを味わいましたが,恵まれた展望と咲き乱れる高山植物を十分に楽しめた山登りでした.

長官山付近より利尻山を望む

【登山前夜:6月19日】
 静岡からバス,飛行機,船と乗り継いで憧れの利尻島に渡る.鴛泊の「旅館しばた」に着いたのは夕食に近い頃だった.海鮮づくしの晩餐もそこそこに,ドラマチックな夕日が見られると言うので,大急ぎで夕日ヶ丘に向かう.沈む太陽とまさに競争,好奇心旺盛な6人が小走りで夕日ヶ丘の展望台まで一気に駈け登るも,残念!,今,一歩及ばず.

夕日ヶ丘展望台

 陽は沈んでもまだ十分明るい.それではと,次は旅館を挟んで反対側のペシ岬展望台へ急ぐ.今度は迫り来る夕闇との競争だ.さすがにここまでくると物好きは半分に減る.
 鴛泊港のシンボルペシ岬の標高は93m.しかし,その展望台への道は登山路と同じ.石のゴロゴロした急斜面の歩きにくい路だ.ここでも急ぎ足で展望台へ向かう.
 夕闇迫るペシ岬の断崖に何百羽もの海鳥が羽を休めている.至近距離にうずくまる海鳥はカメラのフラッシュに驚いた風もない.
 展望台から見える鴛泊の街灯り,その向こうには名残の夕日が水平線を赤く染めている.帰路のことなどすっかり忘れ,しばし見とれる.
 暗闇の中,懐中電灯のない下山はやっかいだ.足でも挫き,明日の利尻山に登れなかったら,いい笑い者だ.慎重に下りながらつらつら思った.「人間,50代も半ばになればすっかり落ち着きと風格が出るものだと思っていたが,私は死ぬまでこんなんだろうか・・・・」と.
 健脚揃いの皆にくっついて走り回った報いが,明日の悲劇をまねくことを,この時には知る由もなかった.

ペシ岬展望台

【登山当日:6月20日】
 朝食のおむすびを受け取り,旅館の車で三合目の登山口まで送って頂く.標高約300m,山頂までの高低差は約1400mだ.10分ほどで,美味しい水の湧き出る甘露泉に着く.水を補給し,いよいよ登山開始.
 針葉樹林帯を黙々と登る.前の人の足元ばかり見て歩くせいか,道端に咲くアマドコロやナルコユリがよく目に入る.傾斜はそれほどきつくない.木はだんだんと低くなる.左手に海が見える,振り返ると礼文島の海面付近には雲がかかっている.辺り一面はマイズルソウの群落だ.
 登りはじめてちょうど1時間,朝食休憩となる.再度登りはじめるが,どうも調子が出ない.昨夕,あちこち走り回ったのが原因のようだ.ペースが速く感じて仕方がない.
 利尻島に着く前から,「皆について行けるだろうか?」とさかんに心配していた F.S.さんの調子は良さそうだ.大きな声では言えないが,F.S.さんはいつも先頭集団で歩き始めるが,途中で何度か息を整えるため立ち止まり,いつのまにか最後尾のサブリーダーの前まで下がってしまうことが多い.
 F.S.さんが,今日はちょっとも立ち止まらない.ということは,長丁場を意識して,いつもよりゆっくりペースなのかもしれない.それについていくのが辛いとなるといささか焦りを感じる.
 五合目付近の右手に雪渓,七合目付近にはエンレイソウの群落と,いろいろ目を楽しませてくれるのだが,傾斜はだんだんきつくなる.あれやこれやの可憐な花が咲いているのだが,立ち止まって愛でる余裕はまったくない.

 前方に,写真で見慣れた景色が現れる.左斜面にたっぷりと雪を残し,青空に聳える利尻山(最上部画像)だ.長官山でもわずかに休憩しただけで出発.ゆるやかな下りにも拘わらず脚がちょっと変な感じだ.昨日,普通の靴で丘をかけ登ったりして,普段使わない筋肉を使ったからだろう.だんだん皆について行けなくなる.ピストン山行だし,迷う心配のない一本道,遅れても何の心配もない.脚をだましだましゆっくり歩くことにする.頼みのF.S.さんも先に行ってしまったようだ.避難小屋を通過してから30分,ようやく九合目に着く.残りは一合,しかし「これからが正念場」と書かれた看板が立っているのが少し気になる.

長官山を振り返る

 火山礫の急斜面,踏み出してもズルズルとずり落ちる.ふくらはぎの変なところに力が入っているのが分かる.「やばい! ツルぞ」座り込んで様子を見る.もみほぐしだましだまし登る.
 沓形コースとの合流点からが塗炭の苦しみだった.ますますの急斜面,アリ地獄のようなぐずぐずの足元.左脚ふくらはぎに激痛が走る.座り込んで痛みが去るのを待ち,再び登る.次は右のふくらはぎだ.這ってでは登れない,また歩くしかない.あろうことか,今度は両太股が硬直する.片方のふくらはぎがつった経験は何度かあるが,両脚のふくらはぎと太股全てがつるなんて考えてもみなかった.頂上直下で「コリャ!,ダメかな」と思う.傍らの岩に腰掛け,先ずは水を飲み,菓子を食べ落ち着くことにする.ゆっくりと時間をかけて両脚をもみほぐす.登る人,降りる人みな真剣な顔つきだ.十人十色,眺めている分にはけっこう面白い.

 両太股をタオルできつく縛り,意を決して再び登り出す.少しでも足元のしっかりしたところを探しながらゆっくりと歩く.ようやくの思いで社のある山頂にたどり着いた.「やったー! というよりホッとした」という感じである.先頭グループからは30分近くも遅れたようだ.
 青空と紺碧の海.見下ろせば,そそり立つ岩峰.「遠くまで来たな」「よく登れたものだ」じわじわと感動が広がる.ボーッとしているうちに霧が出てきた.目の前のローソク岩さえ見えなくなることがある.見え隠れする海,刻一刻,移りゆく様もまた良いものである.

利尻山南峰とローソク岩

 あれほど苦労したザレ場の登りも,さほどのこともなく下ることができて一安心.花を楽しむゆとりもようやくできた.一面に咲き乱れるエゾエンゴサクの淡い青紫色の花に,目を見張った.
 振り返ると,利尻山に雲が巻き付いている.絵になる眺めだ.名残の勇姿をしっかりと目に焼き付ける.
 五合目付近からは雲のすっかりとれた礼文島が全貌を現していた.甘露泉で喉を潤し,全員無事の下山を喜び合った.

山頂を後にするわが登山隊

鴛泊ルート(利尻町ホームページより)

関連情報 アクセスカウンター
利尻町役場 利尻町のホームページ:見る,食べる,泊まる,登る等々の情報満載
利尻山 仲良し姉妹が観光気分で利尻山.笑いと涙と感動の登頂記.イラストも秀逸.
一浴温泉情報
 利尻富士温泉 tel:0163-82-2388 12:00-21:00 \500  利尻島で一軒しかない温泉で1998年5月にオープンした町営の入浴施設。甘露泉へ通じる道の途中にあり、利尻山登山鴛泊コース下山後の入浴に最適。露天風呂からは利尻富士が望める。
更新:2013/08/22