四合目付近で後続を待って一休み。深い緑の森の中に馬返しの小屋の鮮やかなオレンジ色の屋根がはるか下に見える。遠くだけはよく見えるリーダーが「道路脇に我々のバスが停まっている」と言う。本当なら、柳沢口までの一時間が助かることになる。
 新旧道の合流点を過ぎしばらく行くと、何ととみさんらが前にいるではないか。「新道を下ってきた」と言う。われわれは旧道の急坂をそこそこのペースで降りてきただけに、釈然としない気持ちである。
 林の中をしばらく下ると、救助隊の担架に乗せられたケガ人に出会う。追い越してしばらくすると、救助のヘリコプターが上空にやってきた。百メートほど下方で救助の様子をみていたのだが、ものすごい土煙である。みるみるうちにほこりが降ってくる。見物はあきらめて早々に退散し、バスの待つ馬返しに2時30頃到着する。
 奥厳美温泉の宿に着くと、宿の人がバスに乗り込んできて「新しく神社を建立した。神楽を奉納するのでぜひ見て欲しい」と言う。ロビーに荷物を置き、数キロ先の神社までマイクロバスで送ってもらう。山間の広場に、バスに取り付けられた天女の垂れ幕を背景に、地面にむしろを敷いた急ごしらえの舞台。待つ間もなく、太鼓の名人とおぼしき人のばちさばきと歌謡、そして動きの激しい舞が奉ぜられる。思いもかけない幸運に感謝する。

山頂お鉢の内斜面にコマクサの群落

岩手山お鉢の縁,奥が山頂の薬師岳


 昨日は早池峰山に登り網張温泉泊。早朝、宿の裏手から森の小道を5分ほど歩いた所にある露天風呂に行く。『仙女の湯』と書かれているが、入っているのは男性ばかり。朝のすがすがしい樹林の中で、間近に滝を見ながらの温泉はまことに気持ちがよい。
 8時出発。今日もすばらしい天気だ。リフト3本を乗り継ぎ、犬倉山へ向かう。たくさんの人が休んでいた姥倉山は素通りして、黒倉山頂への分岐で一息入れる。
 リーダーの「行くぞ!」のかけ声に、とみさんが「黒倉山頂は眺めがよいとガイドブックに書いてある」と叫ぶも,皆の反応はない.自分も長丁場を思い先ずは体力温存と大勢に従う。
 高山植物では昨日登った早池峰山の方が有名なのだが、今日はまさに花園を歩いていると言っても過言ではない。赤白黄色の花が咲き乱れている。我らの花博士Kさんは昨日の早池峰山で怪我をしたためリタイア。近くの人に花の名前を聞くと、白い花は「シラネーソウ」、ランに似た小さな花を「イワテシラン」等、いい加減な答えしか返ってこない。もっとも、教えてもらっても3分後には忘れているのだから、聞いても仕方のないことではあるのだが・・・・。
 左手下方に御釜湖を見ながら、小さな起伏が続く痩せた岩尾根の鬼ヶ城を越え、不動平に11時40分に着く。計画より40分も遅れたのはめずらしい。
 昼食を済ませ、ザックを置いて岩手山頂を目指す。火山砂礫の急斜面はとても歩きにくい。15分ほどでお鉢の縁に出ると一転、快適な稜線漫歩となる。お鉢の内面にはコマクサの大群落.立ち並ぶ石仏に見守られ、岩手山の最高所、薬師岳山頂に向かう。

 頂上はまさに鈴なり、優に百人を超えている。ごったがえす頂上標識に、参加できなかったメンバーから預かった「岩手山 2041」の標示板を取り付けて記念写真。「ゆっくり下りたい人は来た道を、お鉢巡りをして戻る人は急ぐように」とリーダーが告げるやいなや、何人かの人は小走りに駆け下り、標高2千メートルでのジョギングを楽しんでいる。とても平均60歳にもなろうという人たちとは思えない。

 不動平に集結した後、下山開始。八合目避難小屋の湧き水を飲みたかったが、先頭集団は脇目もふらず素通り、離されては後がつらいので後を追う。七合目の新旧登山道の分岐を右折し旧道を下る。一直線に火山礫の急坂を下る感じであるが、眺めは抜群だ。

岩手山々頂(薬師岳)

一浴温泉情報                                          アクセスカウンター
 いこいの村岩手
 焼走り温泉
tel:0195-76-2161 \500  和風浴槽は溶岩の塊が張られている。扇形の浴室棟から岩手山が望める。 
 網張温泉
 仙女の湯
国民休暇村・温泉保養館から、5分程度歩いた渓流沿い、近くに滝を見上げながら入れる混浴の岩風呂。湯船は浅いが10人は入れる広さ。湯は青みがかった薄い乳白色の硫黄泉。 \無料

網張登山リフト乗り場8:00→犬倉山→黒倉山→鬼ヶ城→11:40不動平→岩手山薬師岳→不動平→14:30馬返し

【山  名】岩手山(薬師岳:2038m)
【日  程】1997年7月20日
【同行者】いつもの山仲間
【行  程】

更新:2013/08/22