静岡OAA会報より抜粋

会報No.  104号(1996/11/15)
山行日  1996年10月9〜13日
シリーズ名  北アルプス裏銀座コース
報告者  依岡陽子さん(文)
HP管理人  参加
山 名  烏帽子岳、野口五郎岳、水晶岳(黒岳)、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳、槍ヶ岳

 トンネルを抜け吊橋を渡り、紅葉された景色を眺めながら、アルプス三大登りアゴ出し尾根と呼ばれるブナ立尾根の登りのことなどすっかり忘れていた。地図には登り6時間、このところ自分達で勝手に歩く山の方が多くなっていて、皆のペースに付いて歩けず最後尾になってしまった。一行は3時間半程で烏帽子小屋へ着いたとの事、私は30分程遅れてやっと着く。
 昼食をとり、空身で烏帽子岳を往復する。岩場の頂上は狭く、4、5人で写真を撮り交替する。好天で360度の展望は早く帰るのは勿体なく、ニセ烏帽子の頂上で小休止。小屋に帰ればいつもの酒宴。夕食前、風が冷たいが小屋前で夕陽の沈むのを大さわぎしながら見る。

 3泊4日の縦走など今迄に経験したことがないので心配しながら、バスは大町を過ぎ七倉バス停で夜明けを待って、総勢25名はタクシーに分乗して高瀬ダムのロックフィルの堰堤上で降りた。

鷲羽岳山頂

烏帽子岳山頂

 石地蔵の立つ東沢乗越からザレを登りもう閉じた水晶小屋着。昼食後、空身で水晶岳へ向う。頂上は360度の展望で立山、剣、薬師、黒部五郎、燕、常念、槍、穂高の山々に自分が北アルプスのど真中に居るんだと実感する。縦走路から外れている為、以前裏銀コースを歩いてパスしていた水野さんは幸か不幸か、百名山の一つとしてこの水晶岳の為にもう一度歩く事になった。

アクセスカウンター

 11日の行程は10時間程の長丁場。朝5時半うす暗い小屋前で準備体操をし、小屋の主人に見送られまずは野口五郎岳を目指す。東の空が赤く、また金色に輝き、朝焼けに染めて太陽が登った。もう閉った五郎小屋を過ぎ、花崗岩塊の積重なった頂上では槍ヶ岳が一役と大さく見えた。一足先に歩き出した人がカメラを忘れて行った。リーダーと2、3の人が一目散に駆け降りていった。「皆んなは行くんじゃないよ」と誰かの声。すぐに追いつきカメラを渡し一件落着。

水晶岳(黒岳)山頂

 花崗岩特有のガラガラの岩屑道を登り鷲羽岳の頂上へ着くと、槍の眺望もすばらしいが風が冷たく長居も出来ず、眼下に見える三俣小屋を目指し急坂を下る。小屋の中はあと2、3日で小屋を閉る準備で、必要以外のふとん等は片付けてあった。予定より2時間も早く小屋に着き、何もすることがないのでいつものアレ。夕方4時頃より雨の音で明日の天気を気遣いながら夕食後早々に眠る。

 「星が出ている」との声に起され、5時からの朝食のために並ぶ。幸い雨は降っていない。5時30分体操をすませ朝焼けの槍ヶ岳を見て三俣蓮華岳へと登る。ガスで何も展望はない、双六岳も同じ。早々に双六小屋に着き、今日最後の西鎌尾根の登りに備える。あまり休まず樅沢岳、硫黄乗越と越える。ガスの切れ間より槍の穂先がチラッと見えた。迫ってくる感じがする。

千丈乗越の風の当らない場所で小休憩、リーダーにあとどのぐらいかと尋ねると40分と答える。私の地図には登り2時間とあるのに、誰も何も申さず黙々と足元だけを見て歩く。“軍隊”の様で異様だったと言う人もいた。地図に40分とあるので40分で登らなきゃと池さんの答。それは下りの時間と見間違えたようだけど、結局平均年齢60才の先頭4人は40分であの急登を登ってしまった。私達も1時間かからず槍ヶ岳山荘へ着いた。時雨が頬に冷たくあたって痛かった。12時少々過ぎに着いて少し天気の様子をみようと、1時間余休んでいると雪に変わって白く積っている。あまり積ると大変なので早々に支度して雪のチラつく中、槍の頂上へ向う。いつもは登山者で賑わう頂上だけど、今日の白い頂はOAAの仲間だけ、展望はなかったが充分楽しんだ。6人が最後まで我慢して持っていて下さった豆腐とお酒で一パイのおいしかったこと。

双六岳山頂

 13日ガス、昨日の雪が残っている槍沢下りである。坊主岩まで下り、あと横尾までフリーと言うリーダーの声で一斉に駆け出した感じ、そして上高地へフリー。12時に上高地へ着いてしまったが、駐車場の渋滞でバスが遅れ14時発となった。帰路のバスでちょっとしたハプニングがあったけど、前半、好天に恵まれ北アルプスのどの山も見渡せた事、雪もまたよし、楽しかった山行に乾杯。

嘉門次小屋(岩魚の塩焼きで乾杯)

更新日:2013/08/23