静岡OAA会報より抜粋

会報No.  101号
山行日  1996年7月18〜21日
報告者  川村 吏(文)
私自身  参加
山 名 三国山、種蒔山、飯豊山、御西岳
烏帽子岳、梅花皮山、北股岳
門内岳、梶川峰

 7月19日明け方、喜多方付近でバスの車窓から白々と明ける空に山々の輪郭がはっきり見えてきた。飯豊鉱泉を通過し奥の御沢キャンプ場に着いた時には雲一つない真っ青な空が広がっていた。
 総勢25名、6時15分出発。東北の深山に相応しからぬ立派な登山道も信仰の故か。三国岳まで約4時間、シラネアオイの群生などを楽しみながら快適な山登りとなる。地蔵山の手前には滔々と湧き出る水場があり、皆むさぼるように杯を重ねる。

  三国小屋で展望は一気に広がる。残雪に覆われた大日岳、これから向う種蒔山、その先に目指す飯豊本山も見える。だが、思わぬ好天に喜んでいたのはこの辺りまで、灼熱の日輪が照り付け稜線には何一つ遮るものもない。切合小屋を過ぎて雪渓歩きが始まり、下からの照り返しも加わって体感温度は40度近いのではないかと言葉を交す。盛んに雪も口に含み頭にかける。夜行の寝不足も加わり疲労が蓄積して、メンバーに遅れも目立ち始め一時間近い差となってくる。

展望が広がる

 それでも16時過ぎ、全員無事本山小屋に到着。雪解け水を汲み、カレーとラーメンのお馴染みの晩飯、1本千円の缶ビールと小川さん持参のジョニ赤での宴会と続さ、夕焼けの中、この日開いたばかりの小屋で一人二千円を払っての就寝となる。

本山小屋から見る夕焼けの大日岳

 翌20日、朝3時頃からざわめきが始まる。4時前に起味、10分後には皆荷物をまとめて外に出る。4時半食事開始、この辺の手際の良さはさすがに山慣れたOAAだと感心する。ただ、前日に続く暑さが予想され必ずしも心踊ってばかりはいられない。6時前、念願の飯豊本山に到着。うっかり通り過ぎてしまいそうな頂で、小さな祠があるだけだ。全員で記念写真、私も82番目の百名山に盛んにシャッターを切る。磐梯、吾妻、朝日、月山とすべて見渡せ、その先の鳥海山に1か月前の思い出にふける人もいた。

本山小屋出発

飯豊山々頂

吾妻連峰(左側奥)、安達太良山、磐梯山(右奥)

 ここから御西小屋までは緩やかな下りで、幅広い尾根に高山植物が咲き乱れる。キンポウゲ、チングルマ、ショウジョウバカマ、ヨツバシオガマ、ハクサンコザクラ、ニッコウキスゲ、シナノキンバイ………。中でも、今まであまり見たことのなかったピンクのヒメサユリの群生は鮮やかであった。御西小屋で大日岳への道を見送って飯豊の最深郎へ入っていく。前方に立ちはだかるものはまず雪渓、縦走路を大きく覆い、その端は谷に切れ落ちる。天気がいいだけに道を見失うことはないものの、時間は予定をはるかに超えていく。激しいアップダウンが続き、とにかく山が深く大きい。相変らずの暑さも手伝い、体力や神経を消耗し先への不安も増していく。

御西小屋

 梅花皮小屋には約1時間遅れで到着し、小屋横の水場で喉を潤す。石転沢を登ってくる豆粒のごとき人々を見下ろしながらさらに縦走路に進む。やっと最後のピーク門内岳を越えたのが昼前。後は標高差 1500m を下るだけとなる、予定時間は4時間。

  実はここからが私にとって初めての経験となる。それでもOAAとしてはいつになく慎重な下りで、滝見場までは何とか付いていけた。しかし、そこから全く足が動かなくなった。皆を次々に見送り、とうとう最後尾を赤池氏、高須氏、私、それに後から加わった久保田君の4人が連れ添って歩くことになった。時々ボーツとして、足下がフラつき、熱射病の状態となる。

 残りの標高差 600m 余りの下りに約3時間かかり、最後は池さんの出迎えを受けながら林道にたどり着いたのは17時過ぎ、そのままへたり込んで気を取り戻したのは差し出されたビールを口に含んだ時で、その後温泉に浸ってやっと無事生還を実感することになった。
 飯豊山の教訓は多い。帰静後、まだ筋肉痛と脱皮に苦しんでいる。いつものように良き思い出だけが残るようになるには後何日が必要か。いずれにしても忘れられない山行になった。

立ち寄り温泉情報                                          アクセスカウンター
飯豊梅花皮荘 tel:0238-64-2111  10:00-19:00 \500   磐梯朝日国立公園内に連なる飯豊山を眺めながらの温泉は最高
いいでのゆ tel:0241-39-2360  09:00-20:00 \500  茶褐色の熱いお湯が1300mの地下より自噴。一般浴の他ジェットバス、打たせ湯、露天風呂がある。
炭酸温泉・泡の湯温泉「三好荘」 tel:0238-64-2220  \500  岩の割れ目から、多量 の炭酸ガスを含んだ泡が湯となって噴出するので、泡の湯の名がついた。
コースタイム
7/19
06:15 御沢小屋出発
07:30 中十五里
08:00 笹平
08:50 地蔵分岐
10:10-11:10 三国岳
12:15 種蒔山
12:30-13:20 切合小屋
14:00 草履塚
15:15 本山小屋(泊)
7/20
05:15 本山小屋
05:35 飯豊山
06:00 駒形山
06:45 御西岳
08:10 御手洗の池
09:15-9:30 烏帽子岳
10:45 北股岳
11:40 門内岳
12:15 梶川尾根分岐
15:00 湯沢峰
15:35 天狗平

更新日:2013/08/23